第6章 甘い蜜にはご注意あれ
戦々恐々、星乃が実弥に声をかけると、血走った双眸がようやくしかと星乃を捉えた。
瞬間、まるで落雷にでもあったように著しく実弥の表情が壊滅する。実弥にとって、それは稀に見るほどに衝撃的な光景だった。
現在の自分の位置情報が刹那的に掴めなくなり、全集中の呼吸が止まりかける。未だかつてそんな心理状態に陥ったことなどあっただろうか。
「ク"···っ!! オ"イ"星乃、テメェ···っ、んな糞阿呆くせぇ頓珍漢な服着てなにしてやがる···ッ!!」
「あの、違うのよ、蜜璃ちゃんとお茶してたらね、前田さんがいらして」
「っ"、馬鹿が、近寄ってくんじゃァねェ······ッ、こちとら保てるもんにも限度ってもんがッ、っじゃなくてだなァア!! あ"あ"クソッ!!」
「実弥、前田さんも隊のことを考えて」
「あんのゲス眼鏡野郎がァァ···!! ブッ殺してやる···っ!!」
実弥の激昂は増すばかり。頭をがしがし引っ掻いて、星乃を視界に入れないよう懸命な様子も窺える。
( ···星乃ちゃんの前じゃ、不死川さんも普通の殿方なのね )
蜜璃は吹き飛ばされた戸を泣く泣く片しながら少々哀れな気持ちで実弥を眺めた。
星乃が試着している隊服は、確かに数ある試作品のなかでも一番露出の少ないものだ。ただし全体的に身体の線に余裕がなくぴったりとしている。
襟も袖もついていた。スカート丈は足首まで長く、どちらかといえば蜜璃の丈短なスカートのほうがすうすうするだろう形をしている。
実弥が頭を抱えているのは、胸もとのちょうど真ん中が星の形でくり貫かれ、そこから星乃の白く柔らかそうな乳房が見えていることだろう。
通常の隊服からではわからなかった星乃の胸。それは殿方なら誰でも触れたくなるような形をしていた。
更にはスカートの両側に深い切り込みが入っていること。
そう。
星乃の服は、まさしくチャイナそのものなのだ。
実弥には申し訳なさを感じつつ、蜜璃は星乃のチャイナ式隊服姿にきゅんと心ときめかせていた。特に、タイツを脱いだ星乃の生足があまりにも美しく見惚れてしまう。
そこへ、「おお」というまさおの喜悦の声がした。