第6章 甘い蜜にはご注意あれ
「な、んだァ!? 甘露寺テメェのその格好はァ!」
「あ···っ、やだわつい···!」
奇妙キテレツなものに遭遇したような眼差しで、実弥は露骨に蜜璃を眺めた。普段から頭に花を咲かせたような女であることは承知しているが、大食漢である蜜璃のことだ。とうとうヤベェもんでも食っちまったか···。そう思わずにはいられない。
「ったくよォ、どうでもいいがせめて何か羽織れやァ。見てるコッチが寒々しいぜ。つっても日頃のオメェの隊服も俺はどうかと思うがなァ」
二人の会話が耳に届き、こんな格好、とても実弥には見せられないわ···と、星乃はこそこそ客間に顔を引っ込めた。
ところでそういう実弥の胸もとのはだけ具合はいいのだろうかあれで······などと思っていることは生涯口にするつもりはない。
蜜璃の試着した隊服は、丸々頭から被る形の上下繋がっているもので、所謂"アッパッパ"。前ボタンが着いていない代わりにゆったりとした木綿に近い生地を用いているらしい。
腰周りには引っ張り出して絞ることのできる紐が通り、スカートの丈は短めだった。ひだは数が減っていて、歩く度ふわりと揺れ軽やかだ。
袖はなかった。胸もとには一部分透けた素材の布地が当てられ乳房の内側は見えている。
「そうね、気をつけます···! (?) ところで不死川さんがうちを訪ねてくるなんて珍しいですよね。なにかあったんですか?」
「あァ、出先で結構な量の桜餅貰っちまったから甘露寺食うかと思ってよォ。確かお前好物だったろ?」
「わあ、いいんですか! ありがとう不死川さん!」
「しかしまァ、見れば見るほどトチ狂った格好してやがんなァ。それはテメェの私服かァ?」
「やだ不死川さん。確かにこれはちょっと変わった形してるけど、街では同じような服が流行してるのよ? それに、これは隊服なの。試作品なんですって。縫製係の前田さんに試着を頼ま」