第6章 甘い蜜にはご注意あれ
「あ、やだっ、びっくりさせちゃってごめんなさいっ。でも大丈夫よ星乃ちゃん。私ね、すごくたくさん食べるの。星乃ちゃんは星乃ちゃんが食べられる分だけ遠慮せずに食べてね」
お皿に積み上げられたパンケーキは星乃の目線よりも上の高さまで盛られ、一枚一枚も分厚い。
一皿目が運ばれてきたときも内心びっくりしたのだが、さらにもう一皿山盛りのパンケーキが追加されたので星乃はたまげた。
蜜璃は華奢な見た目に反して、実はものすごい筋肉量の持ち主なのである。
筋肉の密度は常人の八倍。一歳二ヶ月の頃すでに四貫 (現在の15キロ) もの漬物石を持ち上げたという逸話を残す。
そんな特殊な肉体同様、食べる量もすごかった。相撲取り三人分をも越える量をぺろりと平らげる蜜璃に、星乃の心配は皆無なのだ。
「星乃ちゃんのお父様って、元風柱なの!?」
お代わりの紅茶を注いでいると、パンケーキを口もとに翳した蜜璃が双眸を見開いた。
そうなの。とうなずき、二杯目の紅茶に砂糖は加えず、熱々の湯気の香りを鼻先で堪能してみる。
それで不死川さんと仲がいいのねと、蜜璃は興奮した様子で頬を上気させた。
「一応姉弟子にあたるからなにかと実弥が気になって······どうかしら、柱の皆様とはうまくやれてる?」
「え? ええっと、うん、大丈夫よ! 私は不死川さん素敵だと思うわ!」
慌てた様子で大袈裟にうなずく蜜璃を見て、星乃はくすりと微笑んだ。
「ふふ、気を使わないで蜜璃ちゃん。合わない柱のかたがいるっていうのは実弥から少しだけ聞いているの」
「あ、冨岡さんのことかな」
「水柱様ね。私、お会いしたことはなくて」
「冨岡さんは物静かなかただから、言葉足らずなこともあると思うの」
冨岡さん、私は可愛いと思うのよ?
蜜璃の頬が再びぽっと赤くなる。
「でも不死川さんのことなら心配しないで! 他の柱との関係は比較的良好だし」
「ありがとう。柱に蜜璃ちゃんみたいな子がいてくれてほっとしちゃった。それに、今日はこうしてお茶に誘ってもらえて本当に嬉しかったわ」
「本当? 実は私ね、星乃ちゃんにずっと会いたいと思っていたのよ」
「え?」