第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:
魚や野菜をふんだんに使った手料理が座卓を彩る。
居間は手狭になったので、客間へ移動しての宴会がはじまった。
善逸と禰豆子を中心に皆で乾杯。
料理は天ぷらやけんちん汁、お浸しに鮭大根と、図らずも伊之助や義勇の好物が並んだ。食材のほとんどは天元たちの手土産だ。
炭治郎たちが育てたというかぼちゃは甘めに煮付け、天ぷらとしても活躍した。
甘味には子供たちの好きなアイスクリン。禰豆子の好きな金平糖。そして酒。
蓄音機から流れる流行歌は他愛もないおしゃべりにも花を添えてくれる。
腹が膨れるまで食べて呑み、唄って踊り、笑って泣いた。炭治郎とカナヲが恋仲であると知り、二人が祝言を挙げる楽しみがまた増えたと皆が上機嫌だった。
義勇にも、初春に子が産まれていた。我が子は可愛くて仕方がないのだと酒で赤らめた頬を緩める。
元柱たちは、それぞれが父となっていた。
「宴は夜通し続くだろうなァ」
厨で新しい酒の準備に取り掛かり始めた星乃の背後から、実弥が気をよくしながらやってきた。
子供たちと伊之助は早々に寄り添うように眠ってしまい、善逸や禰豆子も夢の中。炭治郎も限界が近いらしい。
大人組はまだ盃を交わし続けており、実弥はそれにちびちびと付き合っている。
「今日は婆さんもいねぇのに悪かったなァ。師範も出かけちまったしよ、忙しねェだろう」
「ううん、雛鶴さんたちと一緒にお料理ができてとっても楽しいわ。賑やかだとお家の中もより明るくなるし、毎日でもいいくらいよ」
そう言うと、「そいつぁ俺のが願い下げだ」と実弥は笑った。
「それよりどうしたの? もしかしてもうお酒切らしちゃった? 待ってね、もうすぐ──」
背後からふわりと実弥に包まれ、星乃は手にしてした御盆をとっさに胸もとに抱きしめた。
「···実弥?」
「あーあァ······あいつらが帰らねェんじゃァ、今晩はお前を抱けねぇじゃねぇか···」
熱い吐息が後ろ髪を抜けてゆく。
ドキッとしながら、ほのかに流れた酒の香りをゆっくりと吸い込んだ。
「酔ってるの···?」
「ハ······酔っ払っちまうほど呑んじゃいねェよぉ···」
「きゃ」