第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:
「私はこの前蝶屋敷で星乃さんにお会いしたんだよ」
「そういえばカナヲもそんなこと言ってたな」
「それでスミレちゃんと玄優くんと一緒にお花を摘んで遊んだんです」
「えらく楽しかったんだと、あの日は寝付くまで蝶屋敷でのことばっか話してたぜェ。遊んでくれてありがとなァ」
「お礼なんて···っ、私も一緒になってはしゃいじゃったくらい楽しかったです」
実弥が遠慮がちに微笑みかけると、禰豆子は頬をうっすらと赤らめた。
以前実弥に頭を撫でられたときのことをふと思い出してしまった禰豆子。
実弥だけではない。時折、天元や義勇も慈しむように禰豆子に優しく触れてくれるときがある。
兄、炭治郎よりもずっと年上の彼らは触れかたもどこか大人だ。故に、恋心というわけではないがいささかドキドキしてしまう。
そんな禰豆子の背後では善逸の切歯扼腕 (せっしやくわん) ぶりがすさまじかった。
「オイそこの黄色頭ァ、先刻からなに睨 (ね) めつけてやがる」
「アンタまたそうやって! この際だからもうはっきり言わせてもらいますよ! 俺 (ひと) の妻に色目を使わないでいただきたい···!」
「「妻ァ!?」」
実弥と天元が声を揃えて目を剥いた。
「んなっ、お前らそうだったのか!?」
「ぜ、善逸さんってばもう、恥ずかしい···っ」
「照れなくてもいいじゃないか禰豆子」
「お兄ちゃんっ」
「実はこのたび善逸と禰豆子が祝言を挙げることになりまして······もしご都合が合えば皆さんにもご参加いただけたらと思ってるんです」
「そういうわけなんで、もう禰豆子ちゃんに手は出さないでくださいよ···!」
「なに言ってやがんだコイツ」
「そいつァめでてェことじゃねぇの! 折角だ、皆でド派手に盛り上げようぜ!」
「禰豆子ちゃんが結婚?」「お幸せにね」「きゃーっ、おめでとうございますぅ!」「禰豆子もついに結婚かあ」
星乃や雛鶴、須磨やまきをも一緒になって禰豆子を囲み祝福する中、着替えを終えて戻ってきた義勇だけはなんの騒ぎだ? と首を傾げた。
そのときだった。
「スゲェスゲェ! なんだこれ、どうやって使うんだ!?」