第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:
"さとちゃん"が実弥にぺこりと頭を下げると、(実際はスミレがそうさせているのだが)
「オ、ォ······よろしくなァ」
実弥はぎこちなくも真摯にままごと遊びに付き合うのだった。
「おいで玄優」
実弥に代わり星乃が玄優を抱き上げる。
「玄優、とぉとって言えたの? すごいねえ、偉いねえ。私にもとぉとを聞かせて?」
「あ~、ぅあ」
「玄優、とぉとだ、とぉと。ホラ、もういっぺん言ってみなァ」
「ぅ、とぉ、と」
「きゃ、言った! とぉとって言ったわ、今! ねえ玄優、『かぁ』は?」
「オイ待てェ、まずは『かぁ』より『とぉと』をしっかり覚えさせようぜぇ」
「『とぉと』が言えたなら『かぁ』もすぐに言えるようになるんじゃない?」
「お前、んなこと言ってスミレにも先に『かぁ』を覚え込ませたんだったよなァ······」
「あ、あら······まだ気にしてるの? スミレのときのこと」
「別にィ。確かスミレは『まー』だったろォ、最初に口きいたのは」
「そうそう。なにを見ても『まー』だった。そのあとが『まんま』で、次が『かぁ』」
「まんまの後『とぉ』っつったんだぜぇ、スミレは。それをお前が『かぁ』に変えちまったんだろうがァ」
「そ、そうだったかしら···よく覚えてないわ···」
「『かぁ』を覚えたら『とぉ』はすっぽ抜けちまったのか、当分は俺を見ても『かぁ』か『まー』でよォ。スミレの口から改めて『とぉ』が飛び出したときにはえらく感激したもんだぜ」
「それが今は父様だものね。本当、子供の成長は早くて驚かされることばかりだわ」
「だが実のところスミレの『父様』ってェやつも尻こそばゆくてたまんねェんだ俺はァ」
「ふふ。私が父様たちをそう呼んでいるからスミレも自然と呼ぶようになってしまったのね。いいじゃない。隊にいたときも敬称で呼ばれていたんだし。そのうち慣れるわよ」