第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:
長めの吐精を終えた実弥が、肩で息をしながら力尽きたように星乃の上に倒れ込む。
吸い付くような肌の重なり。鼓動の震え。
このまま愛するひとと同化することさえ叶いそうな不思議な心地は、何度経験してもたとえようのない穏やかなで甘美な安らぎがある。
絶頂の余韻からなかなか抜け出せずにいると、隣から「···ふにゃ」と仔猫のような声がした。
刹那、全身を強張らせたのは星乃だけではない。悠揚とした素振りを見せていた実弥の肩もぴくりと小さく跳ね上がる。
二人して恐る恐るスミレへ向くと、スミレは小さな身体をよじらせ眉間を歪めた。
愚図りだすかとひやひやしたのも束の間のこと。再び眠りに落ち着いた我が子を眺め、互いの口からふうと安堵の吐息が漏れる。
実弥と星乃は声をたてずに互いを見つめ微笑んだ。
「···あっちィ」
「ふふ、私も汗だく」
「こりゃあもういっぺん湯浴みするしかねェなァ」
「それなら私がスミレを見てるから、実弥お先にいってき···っ、ン」
星乃の言葉を唇ごと実弥が喰らう。
激しさはない。
慈悲深ささえ感じるような、鷹揚 (おうよう) な口づけ。
たゆたうような口づけはすぐに離され、星乃はゆっくりとまぶたを開いた。
降り注ぐのは、変わらない実弥の優しい眼差し。
「もうしばらくこうしてようぜェ。······一滴も無駄にしねぇように」