• テキストサイズ

はごろも折々、蝉時雨 ( 鬼滅*風夢 )

第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:



 籾 (もみ) の重さに耐えられなくなった稲穂のように頭を垂らし、肩の上で語気を弱める実弥の姿を愛おしいと星乃は思う。

 色素の薄い髪を撫で、今一度反り立つものの裏筋に手をかけた。そうしたいという己の欲望を自覚するより無意識に触れていた。



「···コ"ラ星乃、」



 くぐもった声が届いたが止まらない。素知らぬ顔で続けるていると、実弥の背中がピクンと揺れる。



 ( あとで、怒られちゃうかもしれないけれど、もう、少しだけ )



 昂ると生ずる耳鳴りは、自制心が崩壊してゆくその音だ。

 悩ましげな実弥の呼吸に肩が濡れ、ぞくりと全身が総毛立つ。

 実弥の吐息をこのまま浴び続けていたら、私はどうなってしまうのだろう。反面、濃紺の夜空を連想させるこの深い声音に心髄まで溶かされてしまってもかまわないとさえ思う。

 新たな官能がまた芽を出すかもしれない困惑。それでも先へ進んでみたい好奇心。

 甘美な思考が脳裏に浮かんでは消えてゆく。

 星乃の心は密やかな悦びに満ちていた。

 喉をぎゅっと絞ったような短い掠れ声が鼓膜に触れると、実弥の弱いところを幾分掴めてきたような気がして鼓動が弾んだ。嬉しかった。

 もっと、たくさん、彼を気持ち良くしてあげたい。

 そう思った矢先のことだ。



「星乃、」

「ふ、っ、ぇ」



 隙をつかれた。
 耳たぶを甘噛みした実弥の唇が首筋に流れ着く。驚いて、滑るように陰茎が手から離れた。

 それは、星乃の攻勢が終息を迎える合図なのだと悟るのに、さほど時間はかからなかった。

 ここまでだ。
 実弥にそう言われた気がした。



「さね、み」

「ハ、ァ"、─くそ」

「ぇ」



 肩を掴まれ、反転。
 気がつくと、星乃の身体は寝床に仰向けに落ちていた。膝を立てた実弥が星乃を跨いで見下ろしている。

 降ってきそうな角度から飛び込んできた陰茎は、普段と違った角度から見るだけで得体の知れぬものに思えた。

 星乃は眼差しで実弥を見つめた。



 
/ 516ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp