第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:
口を両手で覆い隠す仕草は決定的だ。まあ須磨となにやら企んでいたところで別にどうとも思わないが、誤魔化すのが下手くそ過ぎてやれやれだなァという気分になる。
実弥は、ひとつ小さな息を落とした。
「···気色悪ィだろォが···。女のもんと違ってよぉ」
「そう···? 男の人も女の人も、大差はないと思うけれど」
「女はテメェでテメェのそそなんざ見れねえだろォ」
「言われてみれば確かにそうね···。少し工夫しないと見れないわ」
むむ、と真面目な顔つきを見せる星乃に思わず気抜けしてしまう。反面、そんな星乃のすべての仕草が逐一可愛げを纏って見える自分も大概だなァと思う。
「俺は、俺が女なら男のモンになんざ触れたくねェ」
フイとそっぽを向きながら、実弥はなおも強情に言い放った。
実弥とて葛藤はある。愛しい女に触れたいと口にされ、嬉しく思わない男はいないだろう。
女が、男の一物に手を伸ばしたり吸茎したり。
男にとってそれが好いものであることも知っている。
内心で上擦ってしまった気持ちを表面に出さぬよう耐えていることも否定はできない。だが与えることに慣れている実弥の愛は、相手の悦楽こそが己の満足に繋がっているのだ。
直接的な快楽は二の次でいい。わざわざ星乃に世話を焼かせなくてもこの身体は十二分に満たされている。
大事な、女なのだ。
愛おしくてしかたないのだ。
この先も、変わらずこの手で守り続けたいと思わせる唯一無二の女房なのだ。
そんな星乃を必要以上に汚してしまうことへの躊躇いと、そう簡単にうなずけるものではないという意固地な悩ましさが払拭できない。
「実弥は、私のものに触れるとき、どんな気持ち···?」