第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:
「───…愛してる」
微笑みかけると、実弥もまた慈しむようなほのかな微笑みを星乃に返した。
「······先、超されちまったか」
他人の耳に触れたら少しだけ恥ずかしい、とりとめのない夫婦の会話だ。折あるごとに実弥と交わす睦言は、まるで花言葉の意味をはじめて理解したときのような喜びに似ていると感じた。
その一方で、愛おしさを証明する言葉にはどうにも限界があるのだということを、星乃は事あるごと思い知らされるのだ。
「あのね···。実弥のココ······触っても、いい?」
手を伸ばし、実弥の下半身の中央部分に手を置く。
寝かしつけのため横になっていたせいか、実弥の浴衣は衿や裾が少しばかり着崩れていた。
開 (ひら) けた合わせから覗く鎖骨が妙に艶っぽく見えて、湯浴みで火照った身体の熱が内側から再燃する。
鼓動が速くなってゆく。
「─っひゃ」
実弥は返事をしなかった。答えを口にするより先に、星乃の首筋を唇で食みながら浴衣の裾に手を差し入れる。
上部に向かい、優しく、ゆっくり撫で上げられる。
「実弥、あの、待って」
「待てねェ」
「や、だめ···っ、今日は、私が」
「触 (ふ) れられんのも悪かァねぇが、俺ァお前に触れてェ」
「ふ、っ」
腰紐の蝶々結びが引かれると、浴衣の締め付けにゆとりが生まれた。
衽 (おくみ) からあらわになる白い脚。
花弁を剥くよう引き下げられた浴衣の衿口から、星乃の肩がむき出しになった。
二つの乳房を両手で下から押し上げるように鷲掴む。
同時に先端に吸いつくと、吐息の先の星乃の素肌がしっとりと桃色に色づいてゆく。
弱い刺激を意識して舌尖を絡めれば、先端の果実が硬く主張してくれる悦びに昂りと熱が凝縮された。
とろけた星乃の眼差しは、しかしどこか恨めしそうに実弥を見つめる。
その表情が、毎度実弥の官能をしたたかに煽ってくるのだということに、星乃はいまだ無自覚だ。
甘声が鼓膜に触れる。
実弥のひたいに、汗が滲んだ。