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はごろも折々、蝉時雨 ( 鬼滅*風夢 )

第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:



「オイ······んな大福みてェな膨れっ面してむくれてんじゃねェ」

「んぅ」



 実弥の指に頬を挟まれ、星乃の唇からぷすりと間の抜けた音がした。刹那、星乃は顔を熱くした。頬を膨らませていたことにはまるで無自覚だったからだ。加えて実弥の顔が目と鼻の先にやってきたものだから、至近距離から子供じみた音を聞かれた恥じらいが倍増する。

 実弥が煽て下手なのは今にはじまったことじゃない。別段肩を落とすほどのことでもないのに。



「······大福は、言いすぎじゃないかしら」



 眉尻を下げ、星乃は唇を尖らせた。

 膨れっ面になっていたことは認めざるを得ないけれど、いくらむくれていたといっても大福と言われるほどの大袈裟な膨れっ面はしていなかったはずだもの。

 口から抜けた空気の音だって、
 小さかったし───…

 ぽつぽつと内心で御託を並べているうちに、ふとあることに気づいた星乃は唐突に目の前が開けたような心地になった。

 "それ"が意外にも腑に落ちて、一転。



「───…ふふっ」



 頬が綻ぶ。



「なんなんだよ···。へそ曲げちまったかと思えば笑い上戸になりやがって」

「ごめんなさい。なんだかおかしくなってきちゃって······私、きっとスミレに"やきもち"を焼いてるんだわ」

「やきもちだァア?」

「ちょっぴりね、羨ましいなって思ったの。スミレのことが」

「···何言ってんだァ」

「だって、スミレは四六時中無条件で実弥に可愛がってもらえるんだもの」



 こてん、と肩にもたれかかると、ふう、と息をついた実弥の腕が星乃の肩に回された。




「あーあァ、困ったもんだぜぇ。なんでうちの嫁ァ、こうしてたまぁに甘えたになってみせるかねェ」

「ふふ、だめ?」

「どうした疲れちまったかァ? 朝から張り切って豪勢なもん作ってくれてたもんなァ」


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