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はごろも折々、蝉時雨 ( 鬼滅*風夢 )

第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:



 湯浴みを済ませ寝間へ戻ると、実弥は片ひじをついてスミレの傍らに寝そべっていた。



「あ、スミレ寝ちゃった···?」

「つい先刻なァ。今日はずいぶんと早かった」



 物音をたてぬよう気遣いながら、「寝かしつけてくれてありがとう」

 礼を言い障子を閉める。



「宇髄さんたちがいらしてくれたおかげですごく楽しそうにはしゃいでいたものね。お昼寝の時間も少なかったし、このまま朝までぐっすり眠ってくれるといいんだけどな」

「昨晩はちと愚図ったからなァ」



 赤子用の布団の上で穏やかな呼吸を繰り返す我が子の腹には、実弥の掌が添えられていた。きっと、スミレが寝付くまで"トントン"してくれていたのだろう。

 おもむろに身体を起こした実弥の隣に、星乃もそっと腰をおろした。



「可愛い寝顔」

「どんだけ眺めてても飽きねェな」

「本当、どうしてこんなに可愛いのかしら」

「どいつもこいつもすっかり親馬鹿になっちまいやがって」

「ご多分に漏れず実弥もね?」

「まァ、大差はねェなァ」

「どこのお家も似たようなものだと思うわ」



 ふふふと、星乃は肩を揺らしてわらう。

 スミレが眠りについた後、こうして愛娘の寝顔を眺め語り合うのが二人の日課となっていた。



「目鼻立ちは日に日に星乃に似てきやがる」

「父様や婆様もそう言うの。スミレは赤子の頃の私にそっくりだって」

「······さぞかしべっぴんになっちまうんだろうなァ」



 不意にぽつりと呟くように言った実弥の言葉を、星乃は聞き逃さなかった。



「···それって、実弥の目には私もべっぴんさんに見えているってこと?」



 傍らからひょいと実弥を覗き込む。すると、実弥が即「まずった」というような表情をした。


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