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はごろも折々、蝉時雨 ( 鬼滅*風夢 )

第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:



「驚いた。あんた子供あやすの上手いんだね」



 まきをが意外そうに瞠目する。



「不死川んちは兄弟が多かったんだよな。お前長男だろ?」

「そうだったのね。どうりでスミレちゃんへの食事も慣れた手つきだと」

「兄弟が多いのはテメェのところも同じだろう宇髄」

「ん? 俺不死川に兄弟の話したことあったか?」

「お前と伊黒が話してんのを偶然聞いちまったことがある。つってもすぐに立ち去ったから詳しいことは知らねェ」



 なんだそうだったのかと納得する天元に、



「ご兄弟のみなさんも忍を?」



 星乃が問う。



「だな。病でもない限りは皆忍として育てられる。生業柄一族が途絶えないよう子沢山になる家が多い。うちも多かった」



 "多かった"と言う天元の言葉は過去形で、彼もまた家族を失ってきたのだろうという経緯がほのかに窺えた。



「だが物心つく頃には人の手は借りるなと教わる。だから特別兄弟に世話んなったとか面倒見たとかいう記憶はねぇな」



 縁側の外を見やった天元の眼差しには、その先の故郷に想いを馳せた儚さのようなものが覗いた気がした。

 風が吹き、風鈴が鳴る。

 星乃も天元の詳しい生い立ちはわからない。

 里を抜ける際、雛鶴たちが連れ立ってきた話は以前柱稽古で話題に上がり覚えているが、それより深い部分が語られることはなかった。

 しかし里を抜けてきたということは、忍という生業を、家を捨ててきたということだ。

 きっと、天元にそうさせるなにかがあったのだろう。



「家族っつうのはよ、なにかありゃ支え合って、みんなで笑い合えんのがいい」



 天元の言葉に、皆は微笑んだりうなずいたり心で深く噛み締めたりする。


 人は、一人でも生きてゆけるのかもしれない。

 物が溢れゆく時代だ。次々に簡便な道具が生まれ、この先、ますます豊かな物質が私たちの暮らしを潤すのだろう。


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