第25章 番外編 ①:*・゚* 或る風のしらべ *・゚・。*:
「そうだ星乃ちゃん、スミレちゃんへの贈り物、ぜひ開けてみてくださいよぉ」
「こら須磨。そういうことはあたしらから催促するもんじゃないよ」
「えー、まきをさんのケチー。いいじゃないですかぁ」
須磨の頬の膨らみを両手でバチンと潰すまきを。相変わらず、この二人はしっかり者の姉と甘えん坊の妹のようだ。
「ふふ。じゃあ、お言葉に甘えて開けさせてもらうわね」
星乃は、紙袋から取り出した贈り物の包装紙を破らないよう綺麗に剥がした。
中身は平たい書物だった。
「······本?」
にしては少々薄い、と思う。
表紙には、二人の少女がお花畑で白詰草を摘んでいる様子の絵が描かれていて、全体的にとても鮮やかな色合いをしている。
"ナナツボシノモノガタリ"という文字の並んだそれは、はじめて目にする形の書物だった。
「絵本よ」
「なんだァ? えほんて」
「赤子から幼児を対象とした書物なの。これを子供に読み聞かせてあげたり、大きくなってきたら自分で読むのにもいいんですって」
「わ、見て実弥。すごく綺麗だし、可愛い」
実弥も物珍しげに覗き込む。
十五、六頁ほどの中身には、内容の異なる七つの物語が収められているらしかった。
物語といっても擬音ばかりのものもあり、動物や乗り物を題材とした内容になっている。
「こんな素敵な本、項目をめくる手が震えちゃうわ」
「スミレに読んで聞かせてやれよ不死川」
「あァ? 今かァ?」
「おう」
「ハ、なんでテメェがいる前で聞かせてやらなきゃあならねぇんだ······お前らが帰ったら」
「ぁ~ぅ~、ぅ~」
そのとき、実弥の膝の上にちょこんと座っていたスミレが絵本に向かって手を彷徨わせた。
「なあにスミレ、これ読むの?」
「ぁぅ」
「ほらほら、スミレも読んでほしいとよ」
「ぅ~ま、ぁぅあ」
「···なら一旦星乃に」
「ん"ぅ"~~」
スミレを膝の上から浮かすと、全身をよじらせて離れたくないと訴えてくる。