第23章 きみに、幸あれ
数日後には、皆で産屋敷邸に集合し寫眞撮影を行った。
何度撮り直しても笑わない実弥に寫眞師もたまらず苦笑い。挙げ句皆が一番良い表情で揃った寫眞にそっぽを向くというていたらくである。
とうとう、埒があかないと撮り直しを拒否した実弥によって撮影会は終了した。
「不死川! 飛鳥井!」
「宇髄さん」
「お前ら近々祝言挙げるんだってな! なんだよ黙ってるなんて水くせぇじゃねぇかァ!」
「···どっから嗅ぎ付けてきやがったァ」
「もっとこう、ド派手にやっちまえよ!」
「そういうもんはあんま性に合わねぇんだよォ······こいつの身体のこともあるしなァ」
「おお、飛鳥井、腹の子は順調か?」
「はい、おかげさまで」
「めでてぇよなぁ! うちもそろそろ欲しくなっちまうぜ!」
「わ、それは楽しみです」
ガキが生まれたら遊ばせようぜと言う天元に、実弥がへェへェと気だるそうに相槌を打つ。
天元は、目もあやな色合いの扇子や上質な白足袋を祝いの品だと実弥に贈り、雛鶴たち三人と星乃は文通をする約束を交わした。
槇寿郎からは金一封。後藤やアオイたちからも花束が手渡され、感極まった星乃の双眸は涙で潤んだ。
千寿郎は、子が産まれてくるのが待ち遠しいと頬を紅潮させてわらった。
「不死川」
最後に背後から声をかけてきた男がいる。
冨岡義勇である。
「飛鳥井と祝言を挙げると聞いた」
「テメェもどっから」
「俺からも祝いの品を謹呈したい」
そう言うと、どこからともなくどんと現れたのは鮭だった。しかもまるまる一匹ときたものだ。
実弥はぎょっとした。
「オイ、なんの真似だこりゃあ」
「鮭だ」
「見りゃあわかる。なんで鮭なんだよ」
「先日宇髄から二人が祝言を挙げると聞いて」
「そりゃ先刻も聞いたわァ」
「受け取ってく」
「いらねェ」
「なに (なぜだ)」
「わはは! なんだよ冨岡、お前ずっと地味なやつだとばっかり思っちゃいたが、ずいぶんと派手なことしてくれんじゃねぇかァ、最高だなあ!」