• テキストサイズ

はごろも折々、蝉時雨 ( 鬼滅*風夢 )

第22章 七転び、風折れ




 ふと傍らへ視線を下げると、崩壊した建物の壁を背に、臀部を落としぐったりとしなだれて座り込む行冥の姿があった。



「────ッ」



 後藤は叫び出しそうになるのをこらえた。

 行冥はぴくりとも動かずそこにいる。左足が失く、どくどくと流れ出す鮮血だけが後藤の双眸を刺激した。



 (ほ、他の皆はどこへ···っ)



 あちこちへと視線を走らせ、捉えた光景に茫然自失し、そして後藤はおののいた。

 皆、行冥と同じような状態で至る場所にうずくまっている。意識がない。斬撃を喰らい四方八方へと吹き飛ばされたのだ。

 刃を握りしめた状態で転がっている義勇の右腕。

 崩落した建物の上層部から飛び出している脚は実弥のものだ。

 誰もが皆、致命傷を負っている。

 立ち上がる者がいない。

 すぐに動ける者がいない。 

 ただ一人、塵埃晴れたその場所にカナヲの姿だけが確認できた。

 がくりと膝を落としたカナヲの近くに、無惨が立ちはだかっている。

 カナヲは日輪刀を握りしめ、しかし小さな身体を硬直させたまま迫り来る無惨を見上げていた。

 愕然とし、凍りついている様子だった。



「やめろー!!」



 思考する間もなく飛び出していた。

 なぜ飛び出したのかはわからない。殺されるかもしれないという恐怖よりも先に、脚が勝手に動いていた。


 だが間に合わない······! 思った刹那、




  "ヒノカミ神楽"




    『 輝 輝 恩 光 』









 後藤の眼前に炎が揺らめく。


 立ち上る、鮮烈な赤。

 
 たちまち、無惨の触手が片方一刀両断された。




「遅くなってごめん」















 炭治郎がそこにいた。








/ 516ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp