第21章 消息の途切れ
それは、今際の際に追い込まれた、無一郎の土壇場の執念が作用したのかもしれない。
黒死牟の肉体を貫いた無一郎の日輪刀が、刃の切っ先に向かってじわじわと赤く染まりはじめた。
「!?」
──ガキィッ!!
ぎりぎりと、苦し気に歯を軋ませる黒死牟の頚をようやく実弥の刃が捕らえる。しかし硬い。あまりにも強靭で頑丈な頚をしている。刃が先へ進んでいかない。
玄弥は地に伏せながら、追い詰められてゆく黒死牟を眺めていた。
まだ、奴の身体の中に自分の肉弾が残っているのがわかる。皆の猛攻で、こちらの存在には構っていられないのだろう。
「血鬼···術···」
上肢をかざし、術を呟く。
黒死牟の背に、再び木の根が出現した。
目障りな。
黒死牟は苛立ちをあらわにした。
まずは玄弥の息の根を止めてやろうと刃を振るう。ところが、技が出ない。見開かれた赤い双眸が狼狽で微かに揺らぐ。
行冥の鉄球が背後から頚を目掛けて振り落とされると、凄絶な衝突音と頚の皮膚をジュワリと焼き付ける音が響いた。
「ぐぅアアア!! ぬァアアアア!!」
これまで冷静沈着だった黒死牟の、断末魔のような雄叫び。
頚は落ちることなくとどまり続けている。
黒死牟は必死に足掻いた。
しかし背中に根付く大木が体内の血を吸い上げ力を奪っていると知り、いよいよ崩壊の危機を感じる。
身体の強張りと激痛の原因は、赤く染まった無一郎の日輪刀だった。
同じだ、と、黒死牟の脳裏を【縁壱】の名が掠める。
何百年と憎み続けてきた、忌まわしき双子の弟、【継国縁壱】の。