第21章 消息の途切れ
"最期まで共に戦う"
そう交わし合った無一郎との約束が、決して破れぬ神聖な誓いのように玄弥の脳裏を潤した。
『俺が上弦の壱の動きを止めたら、俺もろとも撃っていいからね。絶対に躊躇するなよ』
──わかってる。
玄弥は今一度内心で深く頷く。
兄貴を守るため。
師匠を守るため。
仲間を守るため。
皆を死なせないために、この一発で必ず奴を追い込んでみせる。
ドンッ!!
ガガガガガ······ッ!!
玄弥の放った南蛮銃の音が辺り一帯に轟いた。
とっさに刃で弾を叩いて攻撃を回避した黒死牟。しかし玄弥の肉弾も一撃では終わらない。まるで意思のある生き物のように軌道を変えると、黒死牟の身体のありとあらゆる場所にめり込んだ。
直後、黒死牟の体躯から出現した大木が地に深く根を張る。
鬼化した玄弥の血鬼術だった。
南蛮銃には黒死牟の刀と同じぎょろりとした複数の目玉が宿っている。
黒死牟の一部を取り込んだ玄弥の血鬼術は、上弦の壱に匹敵する力となって奴の動きをねじ伏せた。
( みんなを、守る )
玄弥は何度も自身にそう強く言い聞かせる。
兄の実弥は、行冥が到着するまでの間一人きりで黒死牟に立ち向かっていた。
しばし互角に闘っているように思えたが、黒死牟の斬撃で腹に深い傷を負い応急処置で縫い合わせている。失血死しないのが不思議なほどの負傷だ。
鬼殺隊一の力を誇る行冥でさえ、一人では黒死牟を仕留められない。
年下の、自分よりも身体の小さな無一郎は身の危険を犯し最も危うい場所へと飛び込んだ。
自分はこの中の誰よりも弱い存在なのだと玄弥は思う。
腹立たしくて、情けなくてたまらない。
皆が死に物狂いで闘っている様を安全な場所から眺めているだけの自分が。
『一番弱い人が、一番可能性を持ってるんだよ、玄弥』