第21章 消息の途切れ
戦うことには、理由がある。
そこには己の意志がある。
守りたい人がいるからだ。
守り抜きたいものがあるのだ。
匡近もそうだった。
カナエや、杏寿郎もそうだった。
家族のため。恋人のため。友のため。はたまた自身に掲げる信念のため。どれを取っても容易いものなどひとつとしてない。
実弥は、強い人だ。
どんな境遇で在ろうとも、己を不幸だと蔑んで生きてきたことは一度もないと語ってくれた。
そんな実弥だからこそ、この先も生きて幸せになってほしいと切に願うの。
いつの日か、鬼のいない世の中で、心穏やかに笑って過ごすあなたを想う。
抱えきれぬほどの幸福で満たされた生涯を送るあなたの姿を。
例えばそこに、私の姿がなかったとしても。
それだけで、踏み出す力が湧いてくるから。
( 実弥はきっと、生き抜くわ )
燃えるような赤を映した東の空を目指して駆け出す。
眼裏に実弥の笑顔を思い描けば、身体に流れる鬼狩りの血が腹の底から一層滾るような心地を覚えた。