第21章 消息の途切れ
実弥は呆然と和の空間に端座していた。
(お館様······守れなかった)
目の前で爆発した産屋敷邸の瞬間がよみがえり、じわじわと、耀哉の死を実感する。
はじめて耀哉と対面した日、耀哉に向かって暴言を吐いた実弥に耀哉は言った。
『君たちが捨て駒だとするならば、私も同じく捨て駒だ』と。
代々、産屋敷家当主らは護衛を付けてこなかったという。
耀哉も然り。どこまでも自分を特別としなかった。
隊士一人一人に心を配り、殉職した者すべての名と生い立ちを記憶に刻む当主の慈悲深さは実弥に『付いていこう』という忠誠心を抱かせた。
尊敬していた。まだ、何も返せていなかったのに。
また砂のように滑り落ちてしまうのか。
視界の端で牙を剥く鬼を一瞥する。
人間だったはずの面影は一切ない醜い化け物。
──バラ······ッ
実弥は端座したまま一振りの刃でその巨躯をバラバラにした。
それでも鬼は途切れることなくぬらぬらと現れる。
「次から次に湧く塵共············かかってこいやァ」
ゆらり。
おもむろに腰を上げ、
「皆殺しにしてやる」
嘲るような笑みを浮かべ涙を流した。