第21章 消息の途切れ
背後から、無惨の名を大声で叫んだ隊士がいた。
隊士の声もまた凄まじい怒りに満ち満ちている。
市松模様の羽織を纏う、唯一無惨に遭遇したことがある少年。
竈門炭治郎だった。
霞の呼吸
蟲の呼吸
蛇の呼吸
恋の呼吸
水の呼吸
風の呼吸
皆が一斉に呼吸を振るう。
柱が一度に揃ったのだ。
ここで畳み掛けてしまえば───鬼は一気に消滅する。
ヒノカミ神楽
炭治郎が無惨との距離をぐっと縮めた。瞬間、無惨が『かかった』とばかりにニヤリと笑んだ。間を置かず、柱たちの脚もとに出現した和の扉。障子が開き、皆の着地場所がなくなる。血気術だ。落ちる。飲み込まれる。
「これで私を追い詰めたつもりか?」
無惨は嬉々として双眸を剥きながら鬼殺の剣士たちに向かって声高に言い放った。
「貴様らがこれから行くのは地獄だ!! 目障りな鬼狩り共、今宵皆殺しにしてやろう!!」
為す術もなく、柱たちは異空間へと吸い込まれるように落下した。
この場所こそが、───無限城である。
熾烈を極める戦いが、今宵、無慈悲にもはじまろうとしていた。
無限城に落とされた面々は散り散りになり、各々で動くことを余儀なくされた。
炭治郎は義勇と。小芭内は蜜璃と。無一郎は行冥と共に無惨の居場所を探し求め駆け回る。
無限城には無数の鬼が存在している。元は下級の雑魚鬼が、無惨の力で下弦程度の力となり隊士たちの行く手を阻む。
柱はものともせず悪鬼の頚を落としてゆくが、逐一相手にしていては体力ばかりが削られてしまう。厄介なことこのうえない。
無一郎は、行冥から聞かされた耀哉の最期に涙を流し怒りに震えた。そして、無惨に地獄を見せてやると誓う。
皆も同じ気持ちだと、行冥も静かに怒気をあらわにした。
その頃、猪の被り物を頭に乗せた【嘴平伊之助】は、襲いかかる鬼にも怯むことなく猪突猛進で無限城を驀進 (ばくしん) していた。
見知らぬ場所に惑いつつ、兄、実弥の無事を祈りながら仲間を探し求める玄弥。
音を頼りに鬼へと変貌した兄弟子を追う善逸。
血の匂いに誘われて、とある扉に手をかけるしのぶ。