第21章 消息の途切れ
ようやく屋敷の一部を捉え、実弥の心にほんのわずかな安堵が灯る。まだ襲撃とおぼしき異変は感じられなかったからだ。
禍々しさが渦巻いている様子もない。屋敷はひっそりと佇んでいる。
大丈夫だ。お館様たちは無事だ。間に合う。そう信じた。
( 間に合っ··· )
ドォン······ッ!!!
産屋敷邸が、爆発する瞬間までは。
息が止まるような衝撃に双眸を剥く。時の間停止する思考。
いったい、───なにが起きたのだ。
同じ頃、残る柱たちも皆血相を変え産屋敷邸周辺に集結していた。
無一郎。
蜜璃。
小芭内。
しのぶ。
義勇。
そして、義勇と共にいるのは炭治郎。
辿り着いた先、柱たちの目の前で当主の屋敷が吹き飛んだ。夜空に向かって立ち上る炎は瞬く間に広大になってゆく。
流れてくる熱波。赤黒い炎の渦。噎せるよう煙の匂い。
当主が、その家族が屋敷にいたのだとしたら──。残酷な現実が柱たちの脳裏を過る。
だが怯んでいる暇はない。
実弥は迷うことなく奥へと突き進んでゆく。すると、巨大な無数の棘のようなものが一人の男の体躯を貫通している光景が双眸に飛び込んできた。
男の近くには行冥の姿があった。
「テメェかあァァぁあ! お館様にィ、なにしやがったぁぁぁ!!」
突進しながら喉も張り裂けんばかりにがなる。直後、行冥の放った言葉に柱たちの双眸の色が変化した。
「無惨だ!! 鬼舞辻無惨だ!! 奴は首を斬っても死なない!!」
鬼舞辻無惨。
今、柱たちの眼前にいるこの男こそ、長きに渡り憎み追い続けてきた、鬼の始祖。
( !!!! コイツがァ!!! )
無惨を前に、積年の恨みのすべてが実弥の血を滾らせる。
これまで巧妙に姿を隠し逃げ続けてきた無惨。故に、柱でさえその姿を誰も拝んだことがなかった男。
どんな見てくれかと思いきや、それは本当に自分たちと何一つ変わらない、普通の人間の姿をしている。
「無惨!!!」