第21章 消息の途切れ
ガクン、と星乃の膝が地面に崩れた。
星乃は眩暈を起こしたときのように掌で目もとを抑えると、意識を失くしその場に倒れた。
「星乃!? オイどうした···!!」
「緊急招集!! 産屋敷家襲撃!! 急げ!!」
爽籟がしきりに急き立てる。一刻を争う事態だ。狼狽している暇などない。
「──っ、クッソがァッ!!!」
星乃を上肢に抱えると、実弥は己の脚に目一杯の力を込めた。
「不死川様!? どうなさいました」
「すまねぇがコイツを頼む」
「!? こちらは」
「突然倒れた。医者を呼んでやってくれ。俺はすぐに行かねぇとならねえ」
「は、はい! かしこまりました···!」
風柱邸のすぐ傍に構える藤の花の家紋の家。
実弥は家主の老婦に星乃を預け、すぐさま踵を返し爽籟を追いかけた。
( お館様······っ!! )
「緊急招集──!! 緊急招集──!! 産屋敷家襲撃……ッ」
爽籟の疾呼 (しっこ) が山道を裂いてゆく。
嫌な予感が的中してしまったと思った。
刀鍛冶の里襲来後、一抹の不安を抱いたのは実弥だけではないはずだ。
里の者や産屋敷家は、その在処を鬼に悟られないよう定期的に各土地を転々としている。しかし里は襲来を受けた。どこかで鬼に勘づかれたのだ。ならばいよいよ産屋敷邸も例外ではないとの危機を感じた。
耀哉の身を案じた実弥は今一度護衛をすべきだと柱合会議で提案したが、耀哉がそれを受け入れることはなかった。
爽籟の姿だけを頼りに無我夢中で疾走する。続く山道。どんな険しい道のりにも速度を緩めず爽籟を追いかける。疾走する。疾走する。
流れる景色が実弥の焦燥をより掻き立てた。全身からとめどなく汗が吹き出す。
( お館様······! お館様······! )
心の中ですがるように名を呼び続け、導かれるまま地を蹴り上げることだけに集中した。