第19章 :*・゚* 星月夜に果実は溺れ*・゚・。*:
沈黙をほどいたその先で、真一文字に口を結んだ実弥の視線が注がれる。
眼球の深紫が陽炎のように揺れ、思わず「綺麗」と見惚れてしまう自分の心はとうに固まっているのだと確信できた。
心底欲しくてたまらないのは、実弥だけじゃない。
私も、同じなのだと。
顎を持ち上げ唇を重ねる。
能動的な、一瞬の、自分からねだったはじめての口づけ。
意表を突かれた。そんな表情を見せた実弥が可愛らしくて笑みが零れる。
どちらともなく口づけを深めてゆけば、しっとりと濡れた肌が吸い付くような、より密着している感覚に満ち満ちた。
屈折も悲観もない。
ただ、愛するひとをこの身体すべてで受け止められる幸福。とても不思議な気持ちだ。
律動がのんびり再開されると、すぐに快楽が星乃を襲った。穏やかに腰を動かしながら、実弥は星乃のいたるところに甘噛むような口づけを落としてゆく。
耳殻。顎の先。喉の凹凸から鎖骨。乳房。そしてまた、慈しむように唇を食む。
仰向けに揺られる傍らで、互いの両手を重ね合わせ指を絡めた。
「ハっ、早々に···っ、吸い付いてきやがる」
「ン、ぁ、実弥、奥···きもち、い···の」
「馬ッ、鹿コ"ラ"、んな煽られっと──ッ"、ソッコーでちまう、だろうがよォ……ッ"」
「ン、んんっ···!」
星乃の身体も限界に差しかかっていた。気を抜けば失いかねない意識を繋ぎ止めようと、今一度実弥の手を懸命に握りしめる。
気持ちがいい。
身体だけじゃない。心が満ちてる。そう思う。
五感すべてで実弥を感じられる憘び。
今、そのためだけに、生きている。
愛し合うためだけのひとときを、
───実弥と生きている。