第19章 :*・゚* 星月夜に果実は溺れ*・゚・。*:
「私も、実弥が大好きよ···」
折々星乃が紡ぐ言葉は、実弥の欲心を嫌というほどに煽る。
離してやりたくないと思う。夜が明けなければいいと願ったのは、これがはじめてのことだった。
「っ、んで、お前はいつも、そうやって···っ」
ひたいとひたいをぐっと近づけ、実弥は揺蕩う眼球に向かって苦しげな声を吐き出した。
玄弥のことを、傷つけるつもりはなかった。だが怒りに任せて手を出したことは事実だ。竈門炭治郎が飛び出してこなければ、この手で玄弥に大怪我を負わせていただろう。
星乃が屋敷から出ていったとき、とうとう見限られてもしかたがないと、心のどこかで覚悟もしていた。帰宅した星乃が背に寄り添ってきた瞬間は、安堵で言葉が出てこなかった。
なぜ星乃は変わらない微笑みを向けてくれるのだ。手前勝手に突き進むこの俺を、どこまで許すつもりでいるのだ。
「実弥···?」
星乃はとろりとした眼差しのまま、寝具の上で不思議そうに小首を傾げている。
どうしたの、とでも訊ねるように、実弥の背面を緩やかに撫でながら。
この先自分が星乃にしてやれることといえば、星乃がいつ愛想を尽かせてもいいように縛りつけずにいることくらいだ。
その身ひとつで、再び新たな道を歩めるように。
だというのに、心底実感してしまうのだ。やはり星乃はこの自分の姉弟子なのだと。
まるで、母が我が子に与える慈愛にも似た。
漠然的であるにも関わらず、すべてを受け止めてくれるという信頼。安堵感。
それと同じ心地が実弥の心髄にじんわりと染みてくる。
「······星乃」
実弥は、星乃の目尻のくぼみに残った涙を、親指の腹で優しく拭った。
「······お前、俺のガキ、孕む気あるか」