• テキストサイズ

はごろも折々、蝉時雨 ( 鬼滅*風夢 )

第19章 :*・゚* 星月夜に果実は溺れ*・゚・。*:



 案の定、不可思議そうに眉根を寄せて、「ついさっきまで致してたじゃねぇか」とでも言いたげな顔を見せてくる実弥。



「すぐそこの寝間までだろう? んなまじまじ見たりしねぇから安心しろォ」

「~~っ、そう、かもしれないけれど······お願いよ、実弥···」



 実弥は最後まで首を傾げていたものの、「しかたねェなァ」と拾い上げた藍色の浴衣で星乃を包んだ。



「落っこちんなよォ」



 深みのある低い声音が部屋の壁に反響し、行灯の光とともに遠ざかる。












 寝間へ来たとはいえ眠るわけではない。

 実弥はいまだ昂りを手放せずにいた。

 就寝用に揃って並ぶ二つの布団。ぴたりと寄り沿わせた寝具で星乃と仲睦まじく眠る日々。たいていはここで情けを交わす。

 柱は多忙だと言われているが、休息できる夜もある。希望があれば聞き入れてもらえるし、長期であっても申し出れば休暇をもらえる。

 夜の休暇は実弥には久方ぶりだった。

 実弥は滅多なことでは休もうとしないため、年に数日程度、耀哉からの言い付けで休暇を取るようにしている。

 別段休暇など欲しいと思うことはなかったが、星乃とこうして過ごす夜も悪くねェもんだなァと思う。

 しかしこれは鬼の出現が止んだ今だからこその時間とも言える。



 障子の開 (ひら) けた円窓から見る夜の空に月はなく、散りばめたような星だけが煌々と輝いているのが見えた。




/ 516ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp