第19章 :*・゚* 星月夜に果実は溺れ*・゚・。*:
案の定、不可思議そうに眉根を寄せて、「ついさっきまで致してたじゃねぇか」とでも言いたげな顔を見せてくる実弥。
「すぐそこの寝間までだろう? んなまじまじ見たりしねぇから安心しろォ」
「~~っ、そう、かもしれないけれど······お願いよ、実弥···」
実弥は最後まで首を傾げていたものの、「しかたねェなァ」と拾い上げた藍色の浴衣で星乃を包んだ。
「落っこちんなよォ」
深みのある低い声音が部屋の壁に反響し、行灯の光とともに遠ざかる。
寝間へ来たとはいえ眠るわけではない。
実弥はいまだ昂りを手放せずにいた。
就寝用に揃って並ぶ二つの布団。ぴたりと寄り沿わせた寝具で星乃と仲睦まじく眠る日々。たいていはここで情けを交わす。
柱は多忙だと言われているが、休息できる夜もある。希望があれば聞き入れてもらえるし、長期であっても申し出れば休暇をもらえる。
夜の休暇は実弥には久方ぶりだった。
実弥は滅多なことでは休もうとしないため、年に数日程度、耀哉からの言い付けで休暇を取るようにしている。
別段休暇など欲しいと思うことはなかったが、星乃とこうして過ごす夜も悪くねェもんだなァと思う。
しかしこれは鬼の出現が止んだ今だからこその時間とも言える。
障子の開 (ひら) けた円窓から見る夜の空に月はなく、散りばめたような星だけが煌々と輝いているのが見えた。