第19章 :*・゚* 星月夜に果実は溺れ*・゚・。*:
愚かだろうか。
この営みに確たる回避などありはしない。それでも帯をほどいてしまえば情事に耽溺 (たんでき) し堕ちてゆく。
「ひぁ、ぁあ、あっ」
「─ァ"ア"ッ」
引き抜れた陰茎。放たれた白濁。星乃の腰骨 (こしぼね) にかかったそれは、ひょうたんのような腰部の斜面を緩やかに滑り落ち、背面を伝って藍色の浴衣に染みをつくった。
「ッ"、悪い、汚しちまった」
「ふ···ぁ」
万寿菊の浴衣は星乃の下でしゃくしゃに乱れていた。
汚れたと詫びる実弥の声がぼんやり聞こえる。
実弥の浴衣も星乃の汗や涙で汚れてしまったからお互い様だ。
白ちりで事後の処理をしてくれる実弥に弱々しく「······ありがとう」とだけ言葉をかけた。
眼裏が熱い。鼓動が至る箇所を激しく叩き内側で振動している。それでいて、心地のよい脱力感に包まれている。
( いま、終えたばかり、なのに )
身体は休息を欲しているのに、実弥の肌から放出される湿度が恋しくてたまらない。
「星乃」
「ん、」
背後から実弥の影が落ちてくる。
軽やかに重なる唇と唇。
寝間いくぞ、と実弥に言われ、星乃は眼差しで同意した。とはいえ自力で起き上がるにはもうしばらくかかりそうだ。そう訴えかけた矢先、全身がふわりと浮かび上がったので驚いた。
星乃は実弥に抱きかかえられていた。なにも纏っていない身体を横抱きされたので、思わず実弥の首回りに抱きつく。これでは恥部が丸見えだ。
「あ、あの、実弥···これは、少し恥ずかしい···ので」
「あ?」
「浴衣をかけてもらってもいい···?」
しがみつきながら細々とした声で訴える。
どれだけ営みを重ねても、行為とは無関係に裸体をさらけ出すことにはまだ慣れない。
おそらく「見られてもへっちゃら」な質の実弥にはこの恥じらいがわからないのだ。