第19章 :*・゚* 星月夜に果実は溺れ*・゚・。*:
湯浴みを済ませ厨に戻ると、竈の扱いはだいぶん易しいものになっていて、羽釜の下で揺れる炎は間もなく独りでに消えゆこうとしていた。
鎮火後しばらく蒸らせば白米が炊き上がる。
実弥が湯浴みをしている間に白米を蒸らし、漬け物や味噌汁の準備を済ませ、魚を焼いた。
薪の調節には毎度四苦八苦するものの、この程度なら上出来だと頷ける具合に焼き上がり無事に完成。
綺麗に焼けた魚は実弥の箱膳へ、少し焦げついてしまったもう片方は自分の箱膳へ盛り、こっそりと黒い部分を裏にした。
湯気の立ち上るそれを一口大にし、口へと運ぶ。
ふろふき大根は箸を軽く入れただけで容易く真っ二つになり、甘み引き立つ味噌の味が口内で溶けてなくなると、出汁の染みた柔らかな大根が舌の圧力だけで簡単にほどけていった。
「美味しい······幸せ」
「そんだけ旨そうに頬張ってくれりゃあこっちも仕込み甲斐ってもんがあるぜぇ」
「実弥のご飯本当に大好き」
ほくほく顔で舌鼓を打つ星乃を眺め、実弥が静かに破顔する。
毎食の箱膳に並ぶ主食はほぼ実弥のお手製で、実弥が食事の準備をしている間に星乃が湯浴みの準備をしたりすることが日常となっていた。
星乃の料理の腕は相変わらずと言っていい。それでもいつしかぬか床の管理は星乃が任されるようになった。
野菜を放り込んでおくだけで出来上がるとばかり思い込んでいた浅はかな思考は粉々に打ち砕かれ、ぬか漬けの奥深さを知った日々が懐かしく思える。
はじめは失敗続きだったそれも、今では実弥から旨いと褒められるほどのものになっていた。
「そうだわ。折角だから今晩は宇髄さんからのお酒をいただきましょうよ」
「あー、そうだなァ。まあ、たまにはいいかァ」
「私、お酌します」