第17章 この指とまれ
透けるような白肌に大きな猫目。目を引く佇まいも然ることながら、神職の家の生まれのあまねは物腰も控えめで、まさに高潔無比という言葉がしっくり馴染む優美な女性だ。
上座にゆるりと腰を据え、三人は厳かに座礼した。
柱たちも皆揃って箍 (だが) を締め、あまねに向き合う。
耀哉は病状の悪化に伴い今後柱たちの前へ出ることが不可能となった旨が告げられる。そして、無惨との大規模な総力戦が近づいていると、早々に、あまねは本題を口にした。
禰豆子が日光を克服した。となれば、今後無惨自身が目の色を変えて禰豆子を狙ってくることが予見されるのだという。
鬼の最大の弱点は陽光だ。
陽光さえ克服できればより自由を手に入れられる。完全なる不老不死も夢ではなくなる。故に無惨は禰豆子の力を己のものにしようと躍起になるに違いない。
一方で、蜜璃と無一郎はその身体に独特の紋様の痣を発現させていた。
痣とは、戦国の時代に活躍していた始まりの呼吸の剣士全員に発現していたという鬼の紋様に似たものである。
驚いたように双眸を見開いたのは、実弥と小芭内だった。
「伝え聞くなどして、御存じの方は御存じです」
「俺は初耳です。何故 (なにゆえ) 伏せられていたのです?」
実弥の問いに、理由は様々であるとあまねは続ける。
痣が発現しないことにより、思い詰めてしまう隊士がいたこと。故に伝承が曖昧な部分が多いこと。鬼殺隊が何度も壊滅させられかけたこと。その過程で継承が途切れたかもしれないことなどが挙げられた。
ただひとつ、『確かな言葉がある』と、あまねは断言した。
『痣の者が一人現れると、共鳴するように周りの者たちにも痣が現れる』
始まりの呼吸の剣士の一人の手記に、そのような文言が残されていたのである。
そこで、現在鍵となる人物が炭治郎。彼は今、この世代の最初の痣の人物だ。
痣を発現させる方法については炭治郎にも訊ねてみたが、具体的な方法はわからないままで終わった。(グワーッとか、ガーッとか、お腹がググーッとか、主旨がすべて擬音で理解し難いものだったため)
そんなわけなので、炭治郎に続き覚醒した蜜璃と無一郎に期待がかかる。
「御教示願います。甘露寺様。時透様」
あまねは二人に指南を仰いだ。