第17章 この指とまれ
共に暮らしはじめてからしばらくが経った頃、実弥に緊急の柱合会議の報せが届いた。
聞けば、柱二名と一般隊士数名により、上弦の鬼二体の討滅を果たしたのだという。
無惨直属の配下にある十二鬼月。その中でも桁外れに強者と言われる上弦の、肆と伍の二体を同時にである。
これは鬼殺隊の歴史においてもいまだかつてない快挙といえる。
某日、実弥を含めた七名の柱が産屋敷家の座敷の間に集っていた。
「あーあァ、羨ましいことだぜぇ。なんで俺は上弦に遭遇しねぇのかねえ」
片目を瞑り、実弥が心底残念そうな声を出す。
刀鍛冶の里が襲撃を受けたのは先日。
恋柱の甘露寺蜜璃と霞柱の時透無一郎の活躍により、上弦の肆と伍の鬼二体を討滅した。さらに、彼らと共に勝利に貢献した一般隊士たちがいる。
竈門炭治郎と、その妹の禰豆子だ。
二人は以前柱合会議で耀哉と交わした約束通り、鬼殺隊士としての功績を着々と積み上げてきていた。
そして今回の手柄には、実弥の実弟の不死川玄弥の名前も上がった。
「こればかりはな。遭わない者はとんとない。甘露寺と時透。その後体の方はどうだ」
蜜璃と無一郎の怪我の状態を気にかける小芭内。
「あ、うん、ありがとう。随分よくなったよ」
「僕も···まだ本調子じゃないですけど···」
小芭内の心遣いに胸キュンし、頬を赤らめる蜜璃。
伏せ目がちにぽつりと答える無一郎。
「これ以上柱が欠ければ鬼殺隊が危うい···死なずに上弦二体を倒したのは尊いことだ」
念珠を手に二人を讃えるのは行冥。
「今回のお二人ですが、傷の治りが異常に早い。何があったんですか?」
二人の回復力に関心を示すしのぶ。
「その件も含めてお館様からお話があるだろう」
そして義勇。
杏寿郎が殉職し、天元も花街の戦いで上弦の陸を討滅。その代償に、左目と左手を失い鬼殺隊を引退した。
よって、現在の柱はこの七名となる。
そこへ、産屋敷家の御内儀あまねが二人の子供たちと姿を見せた。
「本日の柱合会議、産屋敷耀哉の代理を産屋敷あまねが務めさせていただきます」
【産屋敷あまね】
産屋敷家当主耀哉の妻である。