第16章 :*・゚* くちびるにスミレ *・゚・。*:
実弥に男女の経験があるのかも星乃は知らない。星乃よりかは余裕がありそうだという印象から手慣れているようにも思えたけれど。
実弥は頭の回転が早く順応性も高いから、さほど経験はなくともあらゆるものを即座に自分のものにできてしまうのかもしれない。
「···っ、」
腰を上げるよう促され、実弥を跨いで膝立ちをする。
秘所の真下に添え当てられた陰茎。亀頭が蜜壷の入り口を上下にぬるぬる滑ってゆくと、実弥の唇からも微かに切なげな吐息が漏れた。
「ハ···、星乃、そのまま腰···ッ、下ろせるか」
「つ、ン···っ、この、まま···?」
「そうだ······ゆっくりでいい」
「ふ、···っ、ぁ」
緊張と昂りで身震いする身体をおもむろに沈めてゆく。
膣壁が亀頭に押し広げられ、蜜壺は実弥の形状を作り上げながら刻々と陰茎を埋める。
「、ぁあ」
「ッ"···やっぱ、まだ···っ、狭ェ、な···っ」
途中、半分ほど沈んだところで止まってしまった星乃を優しく鼓舞するように、実弥は星乃の後頭部を掌で撫で回した。
耐えられないほどの痛みはない。ただ、少し苦しい。圧迫感がある。
一気に沈んでしまったほうが楽になれるかもしれないと頭では理解していても、身体のほうは思いきれずに自ずと力が入ってしまう。
実弥も無理に急かそうとはせず、星乃が再び動きだせるまで静観してくれているのが伝わる。そんな実弥の優しさに応えたいと思う気持ちが、少しずつ、星乃を先へ進ませる。
「ん、───っはぁ…っ、あ」
ようやく陰茎が最奥に触れ、星乃の背筋にピリリと甘美な稲妻が走った。
「、ァ"ー······気持ちぃわ······」
「···っ、」
吐息混じりの実弥の言葉に鼓膜が蕩けてゆくのを感じた。
耳もとで受け取る実弥の声は、脳天から四肢の末端をあますことなく侵食する凶器と言っても過言ではないと思う。なのに当の本人はまるで無自覚なのだからまったく困りものである。
星乃の腰が今にも砕けてしまいそうになっていることなど実弥は知るよしもないだろう。