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はごろも折々、蝉時雨 ( 鬼滅*風夢 )

第16章 :*・゚* くちびるにスミレ *・゚・。*:



 そんな困惑が思考の断片にしがみつく一方で、さきほどから膣口付近を指先で擦りながら首や鎖骨に舌を這わせるばかりの実弥はなかなか事を運ばせようとしてくれない。

 ただ、昂りが吐息と化し吐き出されてゆく星乃の様子を、じっと観察しているかのように見える。



「···欲しいか」



 静かに引き金を引いたのは、実弥のほうだった。



「は、ぁ···」

「どうした星乃······欲しいなら、ちゃんとその口で言わねぇとやらねぇぞォ···」

「ふ、っ、はぁ···」



 くらくらする。

 熱くて熱くて、たまらない。

 実弥の一言にすら頭が痺れる。
 もう、このぐちゃぐちゃな状態から解放されたいとぼんやり思う。

 こんな狂おしさからは解き放たれてしまいたい。

 思うのに、反してひとつになりたくて。

 欲しくて。
 欲しくて。



 どうしようもなく、




「···っ、さね、み」




 実弥が欲しくて────。




「っ、おねが···っ」




 一度は腹の底へ沈めた言葉を素直なまま音にする。

 欲動に流されるまま抗えない私は今、淫らな欲界の住人だ。

 そんな私を誰よりも近い場所から実弥が見ている。感じている。

 痴情に溺れる不埒な私を。

 私でさえ知り得なかった、初めて認める私の姿を。



「っ、ほし、いの···っ」



 これまでの自分からは想像もつかなかった色彩が、閉ざされていた内側から表面へと炙り出されるように私を変色させてゆく───。






「ふ、ぁ」

「···言えたじゃねぇかァ」



 実弥がくれたそれはご褒美のような"ぽんぽん"だった。加えて甘やかな低い声音が星乃の身体に穏やかに流れ込んでくる。

 これもまた、幼子へ捧げる飴と鞭の一種のようだと星乃は胸の内で白旗を掲げた。とはいえ実弥のそれは決して目論みなどではないと感じる。おそらくは昔に身に付いた弟妹たちの世話の延長のようなものなのだろうと。


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