第16章 :*･ﾟ* くちびるにスミレ *･ﾟ･｡*:

　時折腹を刺激する陰茎の存在を認めながら実弥の首筋にすり寄ると、乳房から離れた片手が太腿を優しく滑りはじめた。

　腿の内側に流れた指は、そのまま星乃の熱い秘所へと行き着く。



「ひ、ゃ···」



　水音。同時に、星乃の声が腰部と共に跳ね上がる。



「間を置いた隙に乾いちまったんじゃねぇかとも思ったが、なんだァ···ぐしょぐしょじゃねェかァ···」

「や···っ」

「ﾊ···、ッすっげェ、溢れてくんなァ···っ」

「や、ぁン···っ、そんな、しちゃ···っ」

「ッあ"ー、俺の足にまで、垂れてきてんぞォ···っ、先刻はァ···潮まで吹きやがるしよォ···。この好き者がァ」

「っや、だ、言わない、でぇ···」



　星乃の鼓膜に妖艶な低音を流し込む実弥からは、密やかな嬉々を感じた。

　星乃は星乃で、辱しめられているというのに身体を震わせ蜜壷を切なく鳴かせている。



「さ、さね、み」

「···何だ」

「も、わたし···っ···───」



　はしたない言葉が口から零れ落ちる直前、星乃は我に返ったように続くはずの欲望を飲み込んだ。



　( っ、やっぱり、恥ずかしい )



　ふしだらだと思った。

　いくらなんでも性の欲を躊躇いもなく自発的にさらけ出すなど···。

　そんなことはあってはならないというどこで植え付けられたのかも不明瞭な概念が、弾けそうで弾けきれない理性となって星乃に歯止めをかけてくる。

　沸き上がるこの節度のない煩悩ははたして正常な欲望なのだろうか。
　好きな異性に触れられたとき、皆も同じ気持ちになるのだろうか。

　実弥の目に私はどう映っているのだろう。

　すべてをさらけ出したとて、幻滅されたりしないだろうか。