第16章 :*・゚* くちびるにスミレ *・゚・。*:
「っ、実弥、そんなところだめ、汚い···っ」
太腿の内側に滑り込んだ実弥のひたいを、星乃の弱々しい手つきが遠ざけようとする。
実弥はびくともしなかった。
内股をくすぐる髪の質感さえ高揚材料と化し抗えない星乃の手から、次第に抵抗が失われてゆく。
寝間は十畳ほどの広さがあった。
ふすまを開いて正面の壁の中央に、人ひとりが通り抜けられるほどの大きさの円窓が付いていた。
障子の組子で象った模様には実弥の刀の鍔を散りばめたものが施され、(かなり技術の高い職人さんが手を加えたと思われる) 左右に開閉できる障子扉になっている。
ふすまが閉まると、円窓の障子から射す弱い外光だけがぼんやりと寝間を照らした。
という仕様に星乃が気づくのはもう少し後のことで、ふすまを開けた瞬間、実弥が星乃の臀部を片腕に座らせ抱きかかえたので、星乃は思わず実弥の首回りにしがみついたままの状態で寝間の奥へと運ばれた。
ちょうど円窓の下の位置、畳んで積み重ねられた寝具一式のその上に、星乃の体躯が仰向けに沈んだ。瞬間から、ありとあらゆる箇所に実弥の口づけが降り注ぎ、意識を根こそぎもっていかれる。
羽織と隊服の上衣は剥ぎ取られ、すべてがあらわになることを恥ずかしがった星乃の上体にはシャツだけが残された。
胴締めを外され、キュロットスカートも脱がされる。
おおかた実弥の鮮やかな手捌きで、いつの間にか星乃は半裸姿となっていた。
中途半端に起こしていた上体はとうとう腹筋が力尽き、星乃の体躯はぽすりと羽毛の上に沈んだ。
「どこが、どう汚ェのかァ、俺にはさっぱりわからねぇから、余計な気ィ回さねぇで自分が満足することだけ考えとけよォ」
「やっ、ァ、ア」
実弥が秘所に顔を埋める。
膝裏を肩に掛けられ、下肢の付け根を鷲掴むように持ち上げる実弥の手からはもう逃れられなくなっていた。