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はごろも折々、蝉時雨 ( 鬼滅*風夢 )

第15章 とまれかくまれ



「俺はテメェの死んだっつう兄貴を哀れむ気はねぇし、テメェのことも許したわけじゃねェからなァ。調子乗んなよォ」

「さ、実弥···っ」

「······」

「あァ? なんだァァ、その目はァ」

「······いいえ。己の心髄の脆弱さを痛感しています。精進いたします」

「フン」



 何を言われても当然だと、塚本はとうに覚悟していた。兄は無論、自分もそれだけのことをしたのだ。非難され、罵倒されても文句は言えない。摯実に向き合っていこうと思う。

 前回の件を思い出しても、風柱はよほど彼女に惚れ込んでいるのだと見受けられる。

 この時間、負傷しているわけでもない風柱が蝶屋敷にいるということは、彼女の報せを聞き任務を終えたその足ですっ飛んできたのだろう。

 さらに病室から一時たりとも席を外そうとしない徹底ぶり。

 彼が、最高位の剣士、柱の一人。

 文字通り、鬼殺隊を支えているのは柱である彼等だ。

 技術、信念、気迫、佇まい。どれをとっても敬服に値するものである。

 以前、柱とは奇人変人の類の集まりだと小耳に挟んだことがあった。(他、胡蝶様以外の柱とは会ったことがないので実際のところはわかりかねるが)

 特にこの風柱。鬼に対する執念は凄まじく、隊のなかでも一等とんだ荒くれ者。見た目からして凶悪で、ひとたび睨みを利かせただけで失禁する隊士が続出したとか······(※噂です)

 しかしながら、塚本ははなから実弥に皆の言う恐ろしさというものを感じなかった。

 昔から様々な武術に触れてきたおかげなのか、暴れ馬のような輩は見慣れたせいもある。

 彼の高圧的な物言いも、ここまでくるともはや清々しいものだなと感心する。

 故に、何を言われても腹立たしさはなかった。

 ただただ、驚いたのだ。



 (···意外に実直で、過保護なひとだな······)



「テメェの辛気臭ぇ話なんざ心底どうでもいいが言いたいことはそれだけかァ? ならとっとと失せろォ」




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