第11章 律呂の戯れ
「···ふうん。あぁそう······あのお前がねえ」
「チッ、気色悪ィツラしてんじゃァねェよ」
「ようやく腑に落ちたぜ。不死川があれほどムキになっていた理由が。どうやらよっぽどそこの女に惚れちまっているらしいってなァ」
カア···ッ!!と、星乃の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
今の話の流れでなぜそこに行き着いたのか、星乃はすこぶる混乱した。
そういえば、忍は読心術をも身につけていると聞いたことがある······ような気がする。いや、読唇術、だったろうか。(定かではない)
どちらにせよ、やはり柱とは只者ではない人間の集まりだ。なんて恐ろしい。
まるで茹でダコのように真っ赤な顔をしたかと思えば、今度は血の気を引かせ小刻みに震えたり、普段とは違う様子の星乃を眺め、きよとすみはぽかんと不思議そうな顔をした。
( っ、ううん、一旦落ち着こう )
星乃はその場でふるふると頭を振った。
"あの日"から、しばらく時間が経っている。その間実弥からの音沙汰はなく、本人の口から直接的な言葉を聞けたわけじゃない。
実弥の気持ちを悟った体 (てい) でこの状況に勝手な戸惑いを感じているが、もしも、あの日の行為が実弥の気の迷いであったとしたら···?
そう。まだ、
その可能性も十分にあるわけで──…
パシ。
懸命に平常心取り戻そうとする星乃の手を、少々荒っぽく掴んだ実弥の「···あァ」という風になびくような一言が、あまりに優しく星乃の耳殻をくすぐった。
「···どうしようもねぇくれェ、惚れちまってんだよ」
ドクンと、心臓が、痛いくらいに跳ね上がる。
「つぅわけだ。星乃来い。話がある」
「え、っ、実弥···っ」
「はあァ、んじゃあやっぱこいつら連れていくしかねェか」
「キャー! 待ってくださいー!」
「離してください! わたし、この子は!」
なほとアオイの叫び声が甲走る。