第11章 律呂の戯れ
それにしてもずいぶんと派手な身なりの男だと、星乃は警戒心を強くした。
目を剥くほどの体躯は上背に恵まれており、さらには全身の筋肉量が常人の比ではない。
思ったところでハッとする。男が着用しているそれが鬼殺隊の隊服であることに気づいたからだ。
頭やら耳やらにとてつもなくきらびやかな装飾を施しているためそちらにばかり気をとられていたが、首もとが詰襟になっている黒い服は鬼殺隊のものと一致する。
二の腕が丸々さらけ出されている珍しい造形も、きっとまさおが強引に───なわけがなく、この男が自ら所望したのだろうということは派手な出で立ちから十分わかる。
大木のような上腕には金ぴかの腕輪ががっちりとはめこまれているし、顔面に視線を向ければ理解しがたい不思議な模様が双眸の周りに描かれていたりして (化粧?)、しかし日本人離れした見た目故かことのほか釣り合いがとれて見えるのだから妙に感心してしまう。
ここまで奇抜な人間はいまだかつて見たことがない。
もしや、このひとが噂に聞いた───
「······音、柱様?」
垂れ下がる装身具がしゃらんと揺れて、水晶彫刻のような宝石が陽光を反射した。
「如何にも俺は音柱の宇髄天元様だが、あんたは?」
星乃が大鎌と勘違いした二本のそれは、日輪刃だったのだ。
大きさも形も通常のものとは異なるが、よく見ればちゃんと鍔つばが付いている。
音柱の【宇髄天元】
鍛え上げられた肉体を持つ、"忍"を生業とした家系で生まれ育った男である。
幼少期より忍としての訓練を受けてきた、鬼殺隊の中でも異端の経歴を持つ者だ。
容貌は相当な男前。彼はとにかく華美を好むことで有名だった。
そして、嫁が三人いるらしい。
「星乃さん······!」
「うわーん! 助けてくださあい!」
顔面蒼白で助けを求めるアオイと、大粒の涙をこぼしているなほ。
いくら柱であるとはいえ、少女たちを無理矢理どこかへ連れ去ろうとするなんて、音柱は一体なにを考えているのだろう。
「音柱様、お初にお目にかかります。鬼殺隊一般隊士の飛鳥井星乃と申します」
「······飛鳥井?」