第1章 第一章 鬼遣の弓姫
「何をしてるの?どうしてこんな真っ暗な処にいるの?」
男は煩わしげに頭を振り無視を決め込む。
「貴族様ってヘンテコよね?いっつも御簾や几帳の奥に隠れてしまって」
またまた無視だ。心底どうでもいい。ほっとけ。とばかりの念が飛んでる。
「真っ暗なところにいると心も真っ暗に冷たくなってしまうのよ?お外はいい天気よ?お外はきらい?」
幼児は負けじとにじり寄るその際に御簾を高く上げる物だから、若者はまた奥へと下がる。
「ほら、お外はあんなに明るくて綺麗よ?」
「鬱陶しい、私には必要ない。気が変わらんうちにとっとと去ぬれ」
明かりが差し込んで少し部屋が明るくなった為か男の顔が酷く青白く見える。
「貴方、とってもお肌が白いのね。あ、だからお外に出ないのねー。色が白い人はお外に出ると真っ赤に火傷してしまうのだって尼君様が言ってたの。」
子供特有の勝手解釈本人そっち避け自己完結した子供はウンウンと一人でに頷く。
とりあえずこのまま無視を決め込む事にした男はサッサと帰ることを願い無視を決め込む。
すると、いきなりバサっと視界が明るい黄色に染まる。
「それ貸してあげる。それを被ればお日様に直接当たらないでしょ?借り物だけど理由を言えば庵主さまもわかってくださるわ。今度お寺にある深い色のを持ってきてあげる。それまではそれね?」
意味がわからない。
「お日様やお月様みたいに綺麗でしょ?お外に出れない間それを見てて?あと、はい。これも一つだけなら許してもらえるわ。食べてね。美味しいよ」
そう言って干菓子を一つだけ取り出して男に渡す。
それだけ言って荒屋をスルスルと出て行く勿論御簾は降ろして。
壊れた壁を抜けると少年と尼僧がキョロキョロと辺りを見渡していた。
此方に気づき少年が駆け寄りそのまま凪の頭に向かって拳を振り下ろした。
「んの、馬鹿!動くなって言っただろ!?人攫いにあったかと心配したぞ!?」
「凪!?あゝよかった。逸れた時はどうしようかと、まあまぁ、袿はどうしたのです?」
「貸したの。はい、お菓子ありがとう。一つだけ貰っちゃった。」
「あっ?別に全部食ってよかったのに。ま、もう逸れんじゃないぞ。此処は何かと物騒だからな」
「物騒?」
「ああ、怖ーい鬼が出るんだとよ。」