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【鬼滅の刃】外伝 紫苑

第2章 第二章 刃、鋭く玲瓏に


長い夜が過ぎ、朝日が顔を出す頃、人々は悪夢がようやく過ぎ去ったのを感じ、安堵し、皆肩を抱いていた。

芹はこの寺の住職に頼み、小さな墓を作るように頼んだ。住職は渋った。とはいえ、断る理由もなく、墓はその日の内に作られた。
小さな、小石の積まれた、粗末な墓。人の墓とは思えぬソレに亡骸はない。鬼になった者は灰も骨も何も残らず塵と化す。
恐怖だけを誰かの記憶にに残し、自身の姿や存在は誰の記憶にも残らない。その人が何者なのか、生前を知る者も、

人の輪から外れそれでも生きる事を欲した人の成れの果ての何とも物悲しくも虚しい生きた証。
芹は花を墓前に活ける、そろそろ村に戻らねばならない。
「白珠も付き合ってくれてありがとう。」
カァーと優しい声で返事をする。


「あ、あの」
声をかけられると同時にバサバサと羽音がした。顔をお面で隠す。振り返るまでもない幼い子の声は、あの少年の声だ。


「あの、烏殿が、居たので。今朝はいつの間にかお姿が見えなくなって」

随分と懐かれた様だ。少し面をずらして指笛を鳴らすと近くの藤の木の枝が揺れる。

出てくるつもりはないらしい。

少し困った顔をして少年を見る。とはいえ、顔なんてわからないだろうが

「すみません。お話してる途中で。」

芹は首を横に振る。この寺で遊び相手をしてくれる人間は少ない。それに、白珠は少年からしてみればせっかく出来た友人だ。遊び盛りの子供が同い年のない寺に一人。退屈だろう。

「・・・・・」
少年の視線がこちらを無垢という名の矢尻となって突き刺さる。気持ちはわかる。分かるが、

残念な事に芹は喋れない。


さて、どうしたものか

あ、そうだ。



目の前の見知らぬ人を見る。同い年か年上のその人は昨日この寺に泊まった客人。
屋敷にいた当時から兄以外、同じ年頃の人間と接した事のない故か面をしている為か兎に角、初対面のその人から目を反らせずにいた。


チリン、チリン。

その人が手に持っていた長杖を空に翳すと白く澄んだ光が杖を照らし鈴の澄んだ音色を響かせた。その人が此方を向いている。 面で隠れた顔に笑みを浮かべて、括っていた鈴の紐を外すと、天に放り投げた。

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