第2章 第二章 刃、鋭く玲瓏に
「コンバンワ、イカガナサレタ?ワカギミ」
白黒のマダラ模様の烏は此方を見上げて口を開くと人語を話した。
人語を話すマダラ烏とはこれは面妖。自分は狐に化かされたのか。
「オヘンジナイ。タダノ屍カ?イヤシカシ、コノヨウニ温モリガアルゾ?ナントキカイナ屍ダコト。アハハハ」
ぼーっとしてると烏は此方を無遠慮に突いたりしながら一人でに話す。
声は少し高く、女性的な印象と口調故か少年の様な印象が入り混じっていた。
「コンナトコロデドウナサレタ?アマゴゼ達ガご案ジゾ。食事モトラズモノ思イニフケラレルハ些カブスイ。武家ノウマレナレバ『腹が減っては高楊枝』トイウデハナイカ。シラヌカ?」
それを言うなら、腹が減っては戦はできぬでは、と思いながらもこの烏何故自分の生家の事を?と言うか本当に喋っているのか?
むんずっ!と羽を引っ張ってみる。烏は無言で此方の手に向かって鋭い嘴を突き立てる。
「ナニヲスルカ!キサマ!!正シク礼儀知ラズ、ヨンデ字ノ如クブレイ!不敬デアル!ワレノ毛並ヲ乱シオッテ、プンプン。」
羽を広げて大きな声で喋る。
「すみません。よく出来たカラクリかと」
「フン!『猫は200で人語を介す』猫ニデキテ神使ノワレガデキヌワケナカロウ!益々不敬!プンプンプン」
「シンシ?」
「如何ニモ!吾コソハコノ寺ノシンノ主。天照大神ノ使イ八咫烏コト白珠デアルゾ、ヒカヨロウ!」
「寺なのにですか?」「ウヌ?神仏習合ヲシラヌカ」
「それに此方の寺の御尊像は弥勒菩薩かと」「人ハ皆、ワガ主天照大神サマノ御子。カノ弥勒菩薩モ然リ。ヨッテ吾ガコノチニイルノモ当然。シテ、童ガ食事モトラズ何故ココデ物思イニフケッテイルノカ?」
話してみよと促す烏が妙に人間臭く、神様の使いと言っておきながら、お節介焼きなのが不思議で、吶吶と口を開き、独り言の様に話し出した。