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【鬼滅の刃】外伝 紫苑

第2章 第二章 刃、鋭く玲瓏に


 トン、チン、トン

 刃を打つ、槌の音、手から全身に伝う振動。

 トン、チン、トン

 頬を撫でる熱風、頬をかすめる火花。

 トン、チン、トン。

 幼い頃からその音が好きだった。

 記憶にあまり残っていないが、父はとても高名な刀鍛冶だったのだと聞く。
 ソレを聞いて、始めて、槌を、握った。
 握って、打って、鍛えて、そうして父の面影を探した。
  父を近くに感じたくて。
 
  トン、チン、トン。

 ひたすら、ひたすらに鋼を打った。

鋏からやがて包丁、包丁から懐剣。

 少しずつ少しずつ才が認められていった。
 

トン、
 『ふむ、流石、鍛造様の愛弟子、良い腕だ。』
『ふむ、同年代の中では抜きん出てるな』
(もっと、もっと)
『この歳で小太刀を!?』『あゝ見ろ。この小太刀』
『素晴らしい、鋼の質も良いが、それよりもこの刃紋何と美しい』
 『稀代の刀鍛冶になれる腕だ。』
 『だが、どうする?』

(お願い、それ以上は)
チン!

 『口惜しい』『あゝ、口惜しい』

(嫌だ。言わないで、聞かないで、聞きたくない)

『なのに、何故・・・』



・・・・・・・カン!




 ・・・・・・・・

合槌の音がズレてしまい目を覚ます。夢の中の自分はその先を聞きたくないとばかりに、


 寝汗が身体を伝う感覚が気持ち悪い。首筋に髪が張り付きとても不快だった。
 髪を払おう手を動かすが、強く握り込んでいるのか夢の名残りか冷たく強張り、思う様に動かない。
 強く握り込んだ手から僅かに鉄錆に似た匂い。

 「・・・・・ッチ」

舌打ちをし拳を床に叩きつける。強張りは解け、髪と額の汗を拭い起き上がるのであった。


 
 
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