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【鬼滅の刃】外伝 紫苑

第2章 第二章 刃、鋭く玲瓏に



 「師匠の刀は如何ですか?」「相変わらず良い出来だよ。といっても私は刀については素人だからね。見てみるかい?」

手を伸ばしかけるが首を振る。

 「それはお館様に渡す為の刀。持主ではないのに先に見ては不公平です。それに触れなくても判ります。師匠は生半可なモノは絶対渡しません。鋼も一番良いモノを使ったと言ってました。
この刀でまた、多くの命が救える事を祈ります」
 「そうだね。私もいつか、父の様に刀を握る日が来るのだろうか」
若様はとても気性がお優しい方だ。出来る事なら刀を振るいたくはないのだろう。
 「それまでにこの戦が終わらねばそうなるやもしれません。
ですが、私は早く小鍛冶になりたいと思っています」

 純粋に何かを作り出すというのは尊い。その中でも刀というのは本当に美しい。鋼の状態、打手、その日の環境や火の状態、あらゆる事に左右されるそしてそこから生じる波紋は一つとして同じモノは出来ない。そしてこの里で生まれる刀達はまるで人の想いに呼応する様に色が変わるのだ。

 「その時、もし、まだ、刀が必要ならば私が兄様の為におつくりしますね」
 大切な誰かを救い守る為の道具が刀だというならそれを作りたい。

 「それは、少し、楽しみだね」
優しく頭を撫でる手、此方を見て微笑んでいるのが判る。しかし悲しんでいる様にもその声音は聞こえた。

 お見送りの為に里の入り口から出て直ぐの宿まで向かう。
 優しい若様は芹が転ばない様にしっかりと手を握ってくれる。
宿まで着くと若様の付き人らしき人の声がして、何やら慌てた様に此方に向かってくる。

 「いけない兄様だ。」「彼方が過保護すぎるのもいけないと思うんだけど」
悪びれた様子がない。半ば階段を落ちる様な音と共に此方に駆け寄る。
「それじゃあ私はこれで」「もうすぐ夕暮れだよ」
 宿を出ようとする。私の手を握ったままの若様。
 「大丈夫です。それに夕暮れなら尚のこと早く帰らないと。」
 急いで帰らないといけない若様を遅くまで止めてしまったのは此方、その上名残惜しくて宿までお見送りさせてくれたのだ。これ以上の我儘はいけない。

 
 「気をつけてお帰り」「輝昭様達も道中どうぞお気をつけて」

そう言って宿を出る。無数の烏の鳴き声、虫のさざめきもある。まだ大丈夫。
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