第1章 第一章 鬼遣の弓姫
「あれ?ここは?」
気がつくと見慣れぬ場所にいた。深い霧と闇に包まれた暗くて吹く風が身を突き刺すように冷たい。
足元がやけに冷たいと思い視線を落とすと裸足で川に足をつけていた。
単姿で裸足でこんな場所にいたら風邪をひいてしまう。
川岸に向かおうと思い。足を進める。
ザブザブと、水を掻き分ける音が暗い世界に響く。跳ねる水滴が一瞬だけ暗い世界に煌く。暗い闇の中揺れる水面に灯りを見つける。灯は一定の間隔で揺らめく様がまるで星屑。
灯は向こう側へと続いている。闇の中で心細かったのか、灯りに誘われる様にそちらへと向かう。
ぁ・・・・・ーーぁ・・・
水を掻き分ける音に混じって小さな音が響く、川の水が流れる音だろうか?
灯りの向かうに微かに動くものがあった。心細かったのか内心安堵の息が漏れた。人がいたらしい。歩を進める。
・・・・・・ア・・・ァァァ・・・・ーー
音は鮮明になってくる。掻き分ける水音は鮮明にせせらぎの音も強く、そして、自分の吐息、水底の石が擦り合い擦れる音。ソレらとはその音は違う気がした。
息が乱れる。体は芯まで冷えてきている。しかし、灯りまではもう少し、この川を・・・
はたと気づく、自分は何故、あの灯を追っていたのか?
灯があるということは人がいると思ったから。
何故、人について行こうと思った?
川岸に戻る為。
でも、気づくと、自分の身体は胸のあたりまで川にどっぷりと浸かっていた。
灯りをよく見るとソレは、蝋燭の火よりも赤く、光沢を帯びていた。夜闇に光る瞳の様だ。ソレは此方に目を向けている様だ。
その下には肉塊の山、中には腐肉が溶けて、白い骨が覗くものもあった。
光がないはずの窪んだ髑髏の瞳が爛爛と此方を見ていた。まるで獲物を狙うかのように。
恐怖で体が震え上がった。張り付く息、指先まで熱を奪われ芯まで凍りついた。足がもたれ、体が冷たい水の中に沈んだ。
冷たい水の感触が肌に突き刺さる。もがくように手足をバタつかせる。
カァーーー・・・・カァーーー・・・
烏の鳴き声がする。