第1章 第一章 鬼遣の弓姫
少し、落ち着いたらしく、起きた事は訥々と語り出す。大半は尼君から先に聞いた話で聞く必要も無さそうな物だが庵主様は時折相槌をしながら丁寧に聞かれた。
「そうですか、そうですか。とても親切にして貰いましたのね?良い事です。今度お会いしたらちゃーんと御礼を申し上げなさいませね?」
庵主が諭すと大きく頷くもすぐにションボリとされる。
「髪飾り、もう帰ってこない?」
小さくか細い声で凪は呟く。
「何故?」「だって、凪、今日、とってもいけない子よ。
迷子になって、庵主様の大事な袿勝手に渡して、お約束破ったし、尼君さまに抱っこしてもらって、」
「でも、お殿様に袿とお菓子を差し上げた。」
それはそれは優しいお顔で庵主様が凪の頭を撫でた。
「今日は、いけない事もしたし、良い事もたくさんされました。御仏に正直に、伝えられませ。御仏はきっと、お優しくて、お可愛らしい、凪姫さまをお導き下さいますよ。さぁ、もうすぐ夕餉ですから皆の所に行きましょうね?」
「・・・・はい。」
夕餉の時間、一緒にお使いに行った尼君は先に腰掛けて膳が並ぶのを待っていた。
凪はお茶碗に粥をよそい、香の物を乗せ御膳を用意した持っていく。
「今日は、いっぱいいっぱいありがとう。尼君さま
御礼に凪が待ってきたよ。いっぱいいっぱい心配かけて、ごめんなさい。」
「まぁまぁ、小さなおててでお力持ちでいらっしゃる。
まぁまぁその様にありがたや、ありがたや」
尼君は演技がかった雰囲気で手を合わせる。
「他の人の分も凪が持つよ?」
「まぁまぁ、嬉しい事それでは粥とお香のものの御膳をお願いしますね」
「はぁ〜、ありがたやありがたや」
お手伝いしていくうちに漸く元気を取り戻したのかニコニコと笑顔を浮かべた凪の様子を見て庵主様は笑みを深くし、皆で食事の準備を終えて食べるのを待っていたそうな。