第8章 夢蟲の加護
推敲を繰り返した手紙を、伝書鳩に持たせて飛ばす。
飛んでいく方角には、烏野村がある。
「さてと、次は扇南村付近の魔物たちだな」
独り言を漏らした瞬間、轟音と共に空が一瞬暗くなった。
強風が吹き荒れ、空を見上げれば———、一体のワイバーンが飛んでいた。俺が行こうと思っていた方角へ、一直線に。
片翼が破れたワイバーン。
ワイバーンの生息地は、王都付近の渓谷のはず…………
なぜ、こんな辺鄙な土地に?
丘の末端まで出て、ワイバーンの飛んでいく方角を凝らして見ると、扇南村があって、今その門が開かれた。
出てきたのは2頭の馬を先頭にした馬車。
ワイバーンはそちらに向かっている。
「何をする気だ!」
気がついたら自身の荷馬車から馬を外していて、その背に跨って丘を駆け下りた。
腰の短剣が揺れる。
「やあ!」
馬の腿を強く蹴ると嘶き、加速する。
頼む、間に合ってくれ!
ワイバーンは口に火を溜め始めていた———