第8章 夢蟲の加護
そういえば、夢蟲とはうまくやってるか?
アイツはなかなかのひねくれ者だから、苦労するだろう。
それでも、君が死にそうになったときは必ず助けてくれる。
俺がアイツのほとんどを食ったせいで、夢でしか会えないほど弱らせてしまったが、それくらいでないと、また君を蝕んでしまう。
そういえば、この前、こんな噂を耳にしたんだ。
伊達街が国として独立しようとしてるそうだ。
今、人間の大陸中に突如増えた魔族の討伐作戦に追われて、王国側は建国を認めることはできない。
きっと、人間の大陸から魔族が消えれば、まず起こるのが、独立宣言だろう。
その後がまた厄介だ。
王都の陰では、革命を起こそうとする動きもある。
人間の大陸からの魔族消滅は、人間にとって吉と出るか凶と出るか…………
ちょっと楽しみだったりするけど、それを俺の目で見れないのが寂しいな。
もし、ヒナタとアオネが魔王を倒したら、間違いなく世界は混乱し、混沌に陥る。
戦争が起こり、多くの血が流れる。
今が平和だと言う者も現れるだろう。
それでも、正義が悪に変わる瞬間なんて、いつの時代も同じだ。
人間とは、責任転換する生き物だ。
結局は、自分がいちばん可愛いんだ。
そいつらを救い、混沌に落とせ。
俺は応援しているよ。
こんなこと手紙に書いたら、真っ先にナリタに怒られそうだから、絶対書かない。
これは胸の内に留めておいて、知らず知らずの内に忘れよう。そうしよう。