第8章 夢蟲の加護
小高い丘で一息入れようと、旅荷物と商品を満載した荷馬車から降りる。
長閑な風が吹いて、短い俺の髪を揺らした。
今俺が見てる世界を、ヒナタは見てる。
烏野村に突然来た幼い少年は、故郷と家族を失くして精神がボロボロだった。
故郷の事や家族の事を聞けば、すぐに泣き出した。写真もあれ以降見れなかった。
悪夢も見ると言うので、俺に連絡が来て、行ってみれば見れたもんじゃなかった。
子供があんな顔をしていて良いわけない。
あんなにも苦しんで、窶れて、涙も枯らす事なく泣き続けて———。
それでも、君は立ち上がった。
恐怖に打ち勝つために、仇を取るために、自分と同じ子供を増やさない為に。
俺は応援するよ。応援させて。
俺は魔族の血が流れてるだけで、どこも受け入れてくれなかったから。
唯一受け入れてくれた烏野村に恩返しする為に、今日も愛馬と共に野菜を売って、薬を買う。
幌を叩くゴブリンが、命が尽きそうなスライムを連れている。
ほうれん草をあげれば、カモミールをくれた。スライムも元気を取り戻して、元気に森へ帰っていった。
こう見るとゴブリンもスライムも可愛いものだ。なのに人は彼らを毛嫌いし、殺す。
人が魔族を殺すのをやめさせるには、根本的に変えなければならない。
ヒナタ、頼む。
人間の大陸から、俺含め、“魔族”を消してくれ。
故郷に帰れなくてもいい。
人がこれ以上、魔族を殺さないでいいように。
「魔族の殺す=正義」の方程式を、人の頭から消し去ってくれ。
身勝手だと思う。それでも———、