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【FHQ】勇者の物語

第8章 夢蟲の加護


「伊達街、が1番近いと思う」
「ここからどれくらいかかる?」

すると、イワイズミさんが答えた。

「馬車で大体10日だ」
「10日!?——うぎゃっ」

俺は思わずイワイズミさんを向いて、首に激痛が走って悶えた。

「10日は流石に辛いだろ。馬車の揺れを緩和出来ない限り、ヒナタを連れ出すのは酷過ぎる」

イワイズミさんはふうっと息を吐いて、頭を抱えた。

「揺れの緩和……できるかもしれない」

そう呟いたのは、ケンマだった。

「ホント!?」
「うん。この村の技術と俺の魔法で出来るかもしれない」

扇南村の技術……は車輪の技術のことかな。

「ケンマって魔導士なの?」
「一応、部類としては白魔導士」
「すげー!」

イワイズミさんは少し首を傾げていた。
どうしたのか聞こうと思ったが、イワイズミさんが先に切り出した。

「そうと決まれば、馬車を借りれないか聞かないとな」
「俺も行く。魔法使うから実物は見たい」

イワイズミさんが立ち上がり、ケンマは頷く。

「伊達街に行くってんなら、俺も行きます。丁度用事があるんです」

カゲヤマがそう言った。

イワイズミさんはカゲヤマを見て、俺を見て、カゲヤマを見ると、条件を出した。

「道中はクロオの残兵がいる。その妨害被害を軽減させる用心棒になるなら付いてきていい」

カゲヤマは承諾した。

イワイズミさんとケンマが部屋から出て行くと、カゲヤマは俺に言ってきた。

「心境の変化は、あったのか」
「ない」

即答した俺に、カゲヤマは何もしなかった。何も言わなかった。

「とっとと寝ろ怪我人。俺たちがいなきゃ何もできねぇ木偶が起きてても何も変わんねぇ」

そう暴言を残して部屋を出て行った。


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