第7章 赤いローブの襲撃
「観光できる場所?ねぇよ、ンなとこ」
朝食時。イワイズミさんが宿の店主に聞くと、門番と同じ事を言われた。
ここのパンは硬くて、俺はコンソメスープに少し浸して食べてるが、意外とイケる。
イワイズミさんは、厨房に入っていく店主を見送った。
「車輪の製造、見たかった」
「イワイズミさん、そういうの好きなんですか?」
「割と」
アオネさんが「俺も」と言うと、2人は片手でハイタッチした。
「観光地って認識がないだけで、見れるかもしれないですよ」
「だと良いんだけどな」
俺の励ましはあまり意味がなかった。
客が俺達だけの宿はとても静かで、のんびりとした朝食だった。
コインを売って財布を太らせて食料を買う。水と携帯食料が増えた。財布はあまり痩せなかった。よかった。
村を見て回っていると、偶然、車輪の製造工場を見つけた。
車輪の製造は手作業で行われていた。
木を削って組み立てて試走させて。何をどうしているのかわからなかったけど、イワイズミさんとアオネさんの顔が輝いていた。よかったね。
昼食は村の食堂だ。美味しい蕎麦を食べた。
店主のアキミヤさんは、他の村人と比べると人当たりのいい顔で、イキイキと働いていた。
門番や宿の店主は……なんていうか……目つきが悪くて、猫背で……。全体的にやる気がない感じがあった。
気になって聞いてみようと思ったけど、イワイズミさんは「村の問題に首を突っ込む事は無い」て言った。
「向こうが助けを求めてなければ、俺たちの出る幕はない。『旅の先輩』からのアドバイスだ」
そう言われてしまったら何も言えまい。
昼食後は村を適当に散策して、イワイズミさんは広場の木陰で居眠りを始めた。少し離れて俺は剣の素振りをする。アオネさんは日向に膝を抱えて座ってるだけで、小鳥やリスに囲まれていた。
…………やっぱりおかしい。
俺は村に来てから、ずっと違和感を感じていた。やけに静かなんだ。
周りは林に囲まれ、小川は村を横断して、人が働いて……。どこでも見る光景なのに、音が遠い。
俺の耳がおかしいのか、あるいは……
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー