第7章 赤いローブの襲撃
俺達は扇南村へ向けて、また歩き出す。
丘から見たら扇南村は結構近くに感じたかもしれないが、実際の道のりはとんでもなく険しい。
明日に着けたら、まだ早い方だ。
道中は、やっぱり何か話さないと歩く気力が落ちる。俺はイワイズミさんに、旅に同行する理由を聞いてみた。
「理由?前にも言ったように、王宮で平和に見回りするより、剣持って走り回ってた方が性に合うんだ。仲間と組手とかやったりするのも良いが、魔物倒したかったし」
「魔物、嫌いなんですか?」
「魔物自体は嫌いでは無いが、どこかの誰かさんを見ているようで嫌だな」
「『放っておけなかった人』ですか?」
「半分正解。お前はどうだ。魔物嫌いか?」
「嫌いと言うより、怖いですかね。小さい時に寄生されて、ちょっと苦手です」
「寄生されたのかよ!?」
「はい。夢蟲ってやつです」
イワイズミさんは「あいつか……」と呟いて、少しして「災難だったな」と言った。
「夢蟲は、人も動物も魔物も関係なく食っちまう。よかったな、取り出せる人が身近にいて」
「はい!俺もそう思います!」
今夜の寝床を見つけるまで、イワイズミさんの色んな事を聞けた。
旅に出たばっかりの頃は、スライムよりも弱くて、魔法はおろか剣もまともに振れなかったそうだ。
装備も弱くて旅に向いていなかった。
それでも挫けずに力をつけて今に至る。努力はきっと報われるんだな。
テントを張って、携帯食料の夕食後、寝袋で一晩を過ごした。
翌日の、日の入前。
「着いたな」
「着きましたね」
扇南村、到着!!
門の詰め所に声をかけると、険しい顔をした男が俺達を出迎えた。
「誰だテメェら」
ドスの効いた低い声で、俺は思わずイワイズミさんの後ろに隠れた。
「冒険者だ。休養と観光で入村を希望する」
イワイズミさんは慣れた様子で答える。ちょっと図々しく聞こえないか?
男はふうっと息を吐くと、門を開けてくれた。
「観光できる場所なんかねぇよ。いいのか」
「観光できなくとも、休養できればそれで」
俺達は門をくぐって入村する。
門の近くの宿で、今日はもう休んだ。
「明日は観光がてら、食料の買い出し、それからコイン売ろう」
「そうですね。何気に王都で何も買い物出来てないですし」
「ワイバーンさえ来なけりゃ、しっかり準備できたのにな」
静かに夜は更けていく。